日本小児循環器学会理事長 坂本喜三郎

日本小児循環器学会理事長
坂本喜三郎
(令和元年11月8日)

「オール日本・小児循環器学会」

 2019年9月28日18時過ぎ、静岡エコパスタジアムが揺れるほどの歓喜に包まれた。ラグビー会の世紀の番狂わせと言われた『ブライトンの奇跡:2015年9月19日W杯イングランドで、日本が34対32で南アフリカに勝利』に続く、『静岡エコパの衝撃:W杯日本で、日本が19対12でアイルランドに勝利』、その瞬間である。『One team. All for one, one for all.』の理念のもとに心をひとつにして、日本チームが目指すラグビーを、明確な方針と科学的根拠を持った戦略、それを具現する個人とチームが積み重ねた激しい練習、その成果として日本ラグビー界が成し遂げた成果である。幸運にも私は、47,813人とともにラグビーの歴史が塗り替わっていく時間を、魂が震えるほどの感動とともに共有することができた。そして喜びの涙が溢れ出るなかで、『目標に向かって精緻な分析のもとに戦略を立て、不断の努力を積み重ることができるチームを作れれば不可能はない』と心の底から思えた。

 私は2年前理事長に指名され、オール日本・小児循環器学会を掲げて船出をさせていただいた。そして今年6月、選挙理事の集まりで再指名していただきいまこの文章を認めている。この巻頭言は、これから会員の皆様全員と“日本小児循環器学会の今と未来のために何を為すべきか”を語り合うために必要な情報を共有してもらう場とさせて頂くことにした。

  1. ①日本の人口動態は、“段階の世代とその2世に連動していく高齢者実数の増加と生産年齢人口の減少を伴う高齢化”と“長期に続く合計特殊出生率1.4がもたらした出産適齢期人口そのものの減少を伴う少子化”が進んでおり、日本の基盤を揺るがす人口減少が避けられそうにない。この事実に対応して1億総活躍社会を目指すと謳う現日本政府のもとで、厚労省主導で推進されつつあるのが医療三位一体改革「医師の働き方改革、地域医療構想、医師偏在対策」である。医師の働き方改革は個々の医師の働き方に大きく影響することは事実であるが、地域医療構想、医師偏在対策は医師が働く場そのものを変える改革であり、注意して見守る必要がある。
  2. ②循環器病対策基本法(健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法:平成30年12月24日法律第105号)が成立し、『先天性心疾患の成人への移行医療に関する提言』(第1版:2017年12月、第2版:2019年4月)に加え、第8次地域医療構想で『移行医療』が項目に挙がったことを踏まえ、学会として積極的に関わる対応策が求められている。
  3. ③②の課題とともに、社会のコンプライアンスの変化、学会、学術集会への寄付を含む支援体制の変化を踏まえ、日本循環器学会主導で当学会、日本心臓血管外科学会を含む循環器連合設立を前提とした連携強化の流れが加速している。
  4. ④新専門医制度は、それぞれの診療領域で働く医師の“安定した質の担保”を目標にして検討が始まったと記憶しているが、紆余曲折を経ていまは“医師偏在対策を考慮した地域医療構想”に強く影響される制度設計が模索され、最終方向性が明確になっていない。特に2階領域の専門医制度設計が遅々として進んでいないなか、当学会のスタンスを明確にする必要がある。
  5. ⑤次世代育成、特に小児・先天性心臓外科医の次世代育成については、アンケート調査で問題点を浮き彫りにすることができ、前学術集会(札幌)で小児・先天性心臓外科専門医制度の方向性が提案された。この2年が正念場である。

 課題は多い、そしてそのひとつ一つが容易でない。しかし私は、日本小児循環器学会の理事、評議員、すべての会員一人ひとり、そしてその一人ひとりが作るチームの力を信じている。『ブライトンの奇跡』、『静岡エコパの衝撃』は、個々が努力を積み重ねながらチームとしての成果を達成できる日本人の大きな可能性を事実を持って示したくれた。みなさん、我々日本小児循環器学会も一丸となって時代を切り開き次代を作っていきましょう。これから2年間、また宜しくお願いします。