N-IV-4
イソジン水と水道水を使用した口腔ケア前後の口腔内細菌叢の比較
東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所 6 階ICU
笹川みちる,角田妙子,根本静香,小路真由美,山本由理子,山村英司

【目的】当ICUでは,新生児から成人まで様々な年齢層の心疾患患者に集中治療を行っている.心不全や呼吸不全の合併,手術後の免疫低下により,患者は易感染状態にあり,口腔内の自浄作用の低下から細菌が繁殖しやすく気道系感染の原因となりうる.そのため,当ICUでは,イソジン水による口腔ケアを行ってきた.しかし,最近では含嗽液の種類や使用の有無より,その方法やケア回数が細菌の繁殖に影響することが報告されている.そこで,今回我々は,イソジン水を用いた群と水道水を用いた群とに分け口腔ケアを行い,その口腔内細菌叢の変化を比較した.【方法】対象は2001年 9 月~2002年 1 月までに入室した患者のうち挿管患者を除いた46例である.口腔内細菌の培養はICU入室時と退室時に施行した.イソジン群は21例で新生児~11歳まで(中央値 1 歳),水道水群は25例で新生児~9 歳まで(中央値 1 歳)であった.【成績】感染性があると考えられる菌(感染菌)をグラム陽性球菌(GPC),グラム陰性桿菌(GNR),真菌に分類し検討した.イソジン群では,GPCは 3 例中 2 例,GNRは 4 例中 3 例,真菌は 4 例中 1 例で消失した.水道水群では,GPCは 7 例中 3 例で,GNRは 7 例中 3 例,真菌は10例中 3 例で消失した.MRSAの保有率は全体の11%で,イソジン群で 1 例にみられ消失し,水道水群では 4 例にみられ 2 例消失した.感染菌全体ではイソジン群 9 例中 2 例,水道水群15例中 5 例で菌の消失をみた.菌交代または常在菌のみであった例に新たな菌の出現をみたものはイソジン群で10例(48%),水道水群で 7 例(28%)であった.【結論】口腔内細菌の消失が得られたのはイソジン群と水道水群で有意差はなかった.イソジン群が水道水群に比べて,GPCが消失しやすい傾向があった.MRSAに関しては有意差はなかった.菌交代や新たな菌の出現は水道水群の方が少なかった.

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