C-II-13
健常小児における左室心筋重量の増加が左室内血流伝搬速度flow propagation velocityに与える影響について
富山医科薬科大学小児科1),富山医科薬科大学第一外科2)
上勢敬一郎1),橋本郁夫1),渡辺一洋1),渡辺綾佳1),広野恵一1),濱道裕二1),市田蕗子1),宮脇利男1),大嶋義博2)

【背景】これまでわれわれは左室内血流伝搬速度flow propagation velocity(FPV)を用いた左室拡張能の評価を行ってきた.今回われわれは健常小児における左室心筋重量の変化がFPVに影響を与えるかどうかを検討した.【対象と方法】当科循環器外来を検診あるいは定期検診にて受診し,心エコー検査にて解剖学的な異常を認めなかった健常児128名(3.7m~22.5y,平均9.0±5.1y)を対象にした.ALOKA SSD5500を使用し,3.5Mhzあるいは5.0Mhzの単触子を用い左室四腔断面にて僧帽弁拡張早期流入波形(E波)を測定した後,左室心尖部と僧帽弁中央を結ぶ線上でcolor M-modeにて拡張早期流入血流のFPVを測定した.FPVの判定はE波のpeakの50~70%に折り返し速度を設定しM-mode上でblueからredに移行するslopeを測定した.左室心筋重量LVMはDevereuxらの方法に従い左室短軸像から計算した.また,体格の影響を除外するため身長で除して補正した(LVM index).これらLVM,LVM indexとFPVを比較検討した.【結果】全症例のLVMは8.7~225.3g(75.24±3.3g)であった.またLVM indexは26.0~102.6(47.9±12.8g/m)であった.一方FPVの分布は23.7~96.0cm/s(64.1±14.9cm/s)であった.FPVとLVMはr = 0.19(p = 0.06)と相関関係は認めなかったが,LVM indexとは良好な負の相関を認めた(r = -0.46,p < 0.0001).【結語】健常小児においてもLVM indexの増加に伴いFPVは低下傾向を示し,心筋コンプライアンスの変化を示唆するものと思われる.

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