P-I-B-11
軽症洞不全症候群の夜間徐脈に対するツロブテロールテープの治療効果―ツロブテロールテープによる徐脈治療の続報―
福井循環器病院小児科1),福井循環器病院心臓血管外科2)
寺町紳二1),大中正光2)

【はじめに】完全房室ブロックの徐脈に対して,補充収縮の心拍数を上げる目的の治療にツロブテロールテープの貼付が有効であることは昨年の小児循環器学会で報告した.今回,われわれは夜間に徐脈となる軽症洞不全症候群の 1 例にもこの治療を試み,現在のところ良好な経過が得られているので,報告する.【症例および経過】症例は現在 8 歳の男児で,就学時健診で不整脈を指摘されて精査目的で当院受診.12誘導心電図検査で極端な洞性不整脈を認め,ホルター心電図検査では夜間にprolongを認め,最大R-R間隔は2.1秒であり,心拍数は147から47回/分,平均71回/分で,軽症の洞不全症候群と診断した.胸部単純X線写真で心拡大もなく,自覚症状も全くなかったので,外来でホルター心電図をくり返して経過観察のみを行っていた.それまでは最大R-R間隔は2.1~2.4秒で安定していたが,1 年後の検査で 3 秒以上のpauseを一晩(深夜帯)で10回認め,心拍数は156から41回/分で平均74回/分,最大R-R間隔が4.3秒となった.1 カ月後に再検しても,心拍数153から38回/分,平均72回/分,最大R-R間隔は3.7秒となっており,一晩でR-R間隔が 3 秒以上のpauseが6回あった.そこで,以前に完全房室ブロックの徐脈治療に有効であったツロブテロールテープ 1mg(0.043mg/kg)の貼付を開始したところ,pauseは消失し,心拍数は156から50回/分,平均76回/分で,最大R-R間隔が2.1秒に短縮した.現在,治療を開始して 8 カ月経つが,この状態が維持できている.【まとめ】このことより,ツロブテロールテープの貼付は軽症の洞不全症候群においても有効で,全体の心拍数を上昇させることなく,夜間の徐脈を改善させることができると思われた.

閉じる