P-II-B-13
末梢性肺動脈狭窄および慢性胆汁うっ滞を認めない20番染色体短腕部分欠失(JAG-1 遺伝子欠失)の 1 女児例―JAG-1 遺伝子異常の心病変―
徳島大学医学部小児科
枝川卓二,森 一博,嵩原由華,黒田泰弘

Alagille症候群(AGS)の原因遺伝子であるJAG-1 遺伝子は近年家族性Fallot四徴症(以下TOF)の原因遺伝子の一つとしても注目を集めている.今回われわれは,口唇口蓋裂にPDAを合併した20番染色体短腕部分欠失の女児例を経験した.JAG-1 遺伝子は短腕欠失領域に含まれヘテロで欠失していたが,表現型はAGSに特有の末梢性肺動脈狭窄(以下PPS)や慢性胆汁うっ滞は呈していなかった.JAG-1 遺伝子の変異症例と欠失症例においてその心病変が異なるかどうか文献的に考察を加え報告する.【症例】1 カ月女児【主訴】心雑音,無呼吸発作,体重増加不良【妊娠・分娩歴】G-0 P-1 SA-1,妊娠経過に異常なし,GW 41w 0d,BBW 3,264g,Apgar 9 点(5 分).【現症】口唇口蓋裂,眼間開離,前額突出,小下顎を認めた.心エコーにてPDA,軽度肺高血圧,またX線にて蝶形脊椎を認めた.胆汁うっ滞所見および眼科的異常は認めなかった.染色体検査では46,XX,14ps+,del(20)(p11. 2)の核型を示し,AGSの原因遺伝子であるJAG-1 遺伝子の欠失が判明した.また母親の染色体は正常核型46,XX,14ps + [15]と46,XX,14ps+,del(20)(p11. 2)[5]のモザイクであり,患児の染色体異常は母親由来であることが明らかになった.【考察】AGSに合併する心奇形はPPSやTOFが特徴的とされるが,本例ではPDAであった.また胆汁うっ滞所見や眼科的異常は認めなかった.最近報告されたJAG-1 遺伝子の同一の点変異による家族性PPSおよびTOFの家系ではAGS症候を呈さないとされている.またJAG-1 遺伝子のスプライシング異常を有する場合に軽症となる可能性も報告されていることより,JAG-1 遺伝子異常の表現型は多様であると考えられる.JAG-1 遺伝子欠損例での心病変について,変異症例と比較しその相違点を文献的に考察し報告する.

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