PD-IV-4
川崎病による冠動脈障害による突然死について―年代による変化―
国立循環器病センター小児科
津田悦子,黒嵜健一,大橋啓之,鶏内伸二,大内秀雄,越後茂之

1978年から2003年12月までにみられた12例(男10,女2)の突然死について検討した.死亡年代と死亡数は1970年代 1,1980年代 3,1990年代 5,2000年代 3 であった.死亡年齢は 1~27歳で,中央値16.7歳であった.川崎病発症年は1975~1991年で,中央値は1979年,発症年齢は 0~12歳,中央値 1 歳,発症から死亡までは 2 カ月から25年で,中央値11年であった.1970年代の症例は運動中の突然死で,剖検で初めて川崎病による冠動脈障害と診断された.1980年代の 3 症例は,死亡年齢はすべて 1 歳で,両側の巨大冠動脈瘤があった.3 例中 2 例は剖検が施行され,死因は心筋梗塞であった.1990年代以降の死亡 8 例の年齢はすべて15歳以上であった.1 例は急性下壁心筋梗塞と診断された.1 例は有意な冠動脈局所性狭窄をもつ運動を禁止されていた患者で,運動中の突然死であった.1 例は心筋梗塞既往の巨大瘤をもつ患者で睡眠中の死亡であった.その後の 5 例は左心室拡張末期容積の拡大と左心室駆出率(LVEF)の低下がみられた.LVEFは,20~40%であった.NYHA I 度は,4 例であった.2 例は胸部症状を訴えた後倒れ,1 例は転倒した状態で発見され,1 例は睡眠中の死亡であった.脳障害をもっていた 1 例は顔色不良で気付かれた.5 例とも救急車で近医に搬送されたが,来院時死亡で,剖検は施行されず死因は不明である.4 例は心筋梗塞既往,1 例は無症候性心筋梗塞既往があった.全例multifocal PVCがあり,2 例にVT short run,2 例にcoupletがみられた.75%以上の局所性狭窄は 2 例にみられた.【考察】1990年代以降では,川崎病による冠動脈障害の診断が的確に行われるようになった.治療では,抗血栓療法,冠血行再建術が施行され,発症から数年以内の心筋梗塞による突然死は減少した.しかし,1980年代に心筋梗塞を発症した低心機能の患者が,成人期に入り突然死する場合があり,注意が必要である.

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