P-II-C-1
ファーストパス法 + マルチゲート法による先天性心疾患の心機能評価
国立循環器病センター小児科
元木倫子,黄瀬一慶,羽二生尚訓,坂口平馬,吉田葉子,渡辺 健,越後茂之

【背景と目的】先天性心疾患領域でもファーストパス法とマルチゲート法はそれぞれ確立された検査方法である.最近では 1 回のRI(99mTc)静注によりファーストパス法とマルチゲート法を同時に施行できるようになり,先天性心疾患での応用について検討した.【方法】先天性心疾患症例(術後を含む)で本法を施行したのは 5 例で,同時期にカテーテル検査を施行した症例はうち 3 例.1 例は造影剤使用不可のため本法を施行.各症例について本法とカテーテル検査結果を比較し,先天性心疾患で応用するうえでの利点,欠点について検討した.【結果】症例 1 はファロー四徴術後でカテーテル検査にて両側PSによる右室圧上昇(RVP 51mmHg,RVP/LVP = 0.43),重度のPRと右室拡大,右室駆出率低下(RVEF 16%)を認めた.ファーストパス法ではPRによる右心系の著明な拡張と停滞,PSによる肺・大動脈間通過時間の延長を認め,RVEFは15%であった.またマルチゲート法で右室心筋へのRIの集積を認め,右室圧上昇が示唆された.症例 2 はPPHの症例で,カテーテル検査では著明なPHと右室圧上昇(RVP 70mmHg,RVP/LVP = 0.73)を認めた.RVEF 54%.ファーストパス法ではPHによる肺・大動脈間通過時間の延長を認め,RVEFは47%であった.マルチゲート法では右室へのRI集積が左室と同程度に認められ,等圧に近い右室圧上昇が示唆された.【考察】ファーストパス法では,(1)静脈系の通過障害,逆流,(2)右房・右室の拡大,(3)右室駆出率,(4)肺血管の異常,肺高血圧の有無を,マルチゲート法では(5)心筋血流,(6)左室駆出率,(7)右室/左室圧比の評価,推定を行うことができ,評価の難しい右心系の情報を得ることができた.造影剤の使用を回避したいときも有用であった.RIをボーラスで静注するルートを確保すること,ローテーションしている心構造が多いため,撮影方向に注意が必要である.

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