E-III-24
遺伝子SCN5Aに変異を認めた進行性心臓伝導障害の 1 家系例
新潟市民病院小児科・新生児医療センター1),新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野2)
佐藤誠一1),沼野藤人1),細田和孝2),井埜晴義2),星名 哲2),朴 直樹2),長谷川聡2),鈴木 博2),内山 聖2)

【はじめに】心筋細胞膜のNaチャネルをコードする遺伝子の一つであるSCN5Aは,Brugada症候群や先天性QT延長症候群(LQT3)などで種々の変異が報告されている.今回,進行性心臓伝導障害(PCCD)の 1 家系において,これまで報告のなかった変異を認めたので報告する.【症例】16歳,女児.中学校の心電図検診では洞調律で心拍数70/分と正常範囲内の診断であった.高校入学時の心電図検診で,完全房室ブロック(心拍数40/分)と診断された.父親は13歳時に完全房室ブロックと診断され,32歳時にペースメーカ植え込み術(PMI)が施行されている.【経過および治療】入院中の心電図モニターおよびHolter心電図より,最長12.3秒のポーズを確認した.ポーズには,(1)洞停止によるもの,(2)房室ブロックによるもの,の 2 種類を認め,日中にも 7 秒程度の無症候性のポーズが確認できた.以上よりAHAガイドラインからPMIの適応と判断し,経静脈的にDDDペースメーカの植え込み術を施行した.【SCN5Aの検索】本人および家族に十分な説明をしたうえで,同意を得て各種遺伝子異常の検索を行った.SCN5Aはdirect sequence法で施行した.その結果,3823番のGがAへheterozygous mutationしD1275Nの結果を得た.なお父親にも同様の変異を確認した.【考察】SCN5Aに関しては,Brugada症候群やLQT3,乳児突然死症候群や特発性心室細動,PCCD(Lenegre病)など,表現型が極めて多彩であることが報告されている.また合併症例や同一家系内での疾患混在も報告されている.一方Naチャネルの機能変化としては,増加(LQT3)と減少(Brugada症候群 < PCCD)が報告されている.小児科領域においても表現型とチャネル機能を含めた大規模な検討が必要と考える.

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