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若年性骨髄単球性白血病の骨髄移植後に発症した肺高血圧症に対してボセンタンが著効した 1 例
広島大学病院小児科
小西央郎,田原昌博

骨髄移植後に発症した肺高血圧症の報告は少ない.今回われわれは骨髄移植後の肺高血圧症に対してボセンタンが著効した 1 例を経験したので報告する.症例は 3 歳,女児.若年性骨髄単球性白血病と診断,広島赤十字病院入院.39病日より化学療法開始(AML 99).157病日に血縁ドナー(HLA full match長兄)より同種骨髄移植施行.前処置は,放射線照射 6Gy,fludarabine,L-PAM,cytosine arabinosideを使用.GVHD予防はMTX単独で行った.200病日頃より乾性咳嗽出現.245病日退院.258病日夜間の呼吸困難,努力呼吸,腹痛出現.NYHA IV度.260病日顔面浮腫,尿量減少し再入院,利尿剤静注でいったん軽快したが,内服へ変更後増悪.280病日lipo PGE1開始,286病日広島大学転院.心拍132bpm,呼吸32bpm,血圧82/40mmHg,II音亢進,III音聴取,肝腫大,浮腫,GVHD皮膚所見を認めた.NYHA III度.LVDd 29mm,FS 20%,TRPG 45mmHg,BNP 521.7pg/ml,287病日利尿剤,olprinone,warfarin併用のもと,ボセンタン 0.75mg/kg/日より開始,副作用がないことを確認のうえ,293病日より1.5mg/kg/日へ増量,296病日頃より夜間の腹痛出現,LVDd 26mm,FS 29mm,TRPG 67mmHg,BNP 1,869pg/mlと増悪,lipo PGE1併用開始.310病日低拍出症候群と考えられる腹痛,アシドーシス発作出現,315病日ボセンタン 3mg/kg/日へ増量.319病日腹痛発作出現,心エコーで右房拡大,下大静脈拡大の増悪を確認したが,323病日より症状軽快傾向を示し,344病日TRPG 40mmHg,NYHA I度,361病日BNP 49.2pg/ml,と改善し,369病日退院となった.肺高血圧の原因として,移植前処置に用いた化学療法,放射線治療によるVOD,あるいは,GVHDによる血管炎が考えられたが,生検は行えなかった.ボセンタンは,投与開始後,約30日後より効果発現がみられた.

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