I-P-62
アントラサイクリン系薬剤による拡張型心筋症の検討
静岡県立こども病院循環器科
原 茂登,伴由布子,古田千左子,満下紀恵,金 成海,田中靖彦,小野安生

【背景】アントラサイクリン系薬剤による拡張型心筋症(以下AIDCM)の発症はよく知られているが,治療終了後遠隔期に発症または増悪する症例も認めることがある.【目的】遠隔期発症のAIDCMの特徴に関し検討する.【症例 1】6 カ月時のマススクリーニングで神経芽細胞腫発見され,手術 + 化学療法(アドリアマイシン換算228mg/m2)を施行.一時的にLVEF低下が出現したことがあったが,外来ではLVEF = 70%,LVDd = 120%前後であった.13歳時に食欲低下,全身倦怠,下痢,浮腫,末梢チアノーゼが出現.心拡大,EF低下(20%)を認めて紹介入院.【症例 2】7 カ月時発症の神経芽細胞腫stage 3 にて外科的切除,および化学療法(アドリアマイシン換算455mg/m2)を受けた.以後経過は順調で心機能も正常であった.15歳時,労作時呼吸困難が出現.心拡大,EF低下(23%)を認めて入院.【症例 3】3 歳発症のAML.再発を繰り返し,骨髄移植を受けて現在寛解を維持している.アドリアマイシン換算で465mg/m2を使用.7 歳頃より軽度心機能低下(EF 50%前後)を認めていたが,特に治療は行われていなかった.18歳時に呼吸困難を訴えるようになり,胸水貯留および心拡大増悪およびEFの低下(39%)を認めたため入院.【方法】以上 3 例(A群)と乳児期以降に特発性拡張型心筋症と診断した 9 例(B群)と比較すると,入院時のEFはそれぞれ27 ± 12%,27 ± 10%と差はなかったが,左室拡張末期径(% of normal)は114 ± 8%,147 ± 10%とA群で有意に低かった.またA群の 2 例で心臓カテーテル検査を施行したが,左室拡張末期容積は164%,135%と左室の拡張は比較的軽度であったものの,肺動脈楔入圧は35mmHg,25mmHgと高値を示した.【考察】いずれの症例も特発性肥大型心筋症と比較するとEFの低下は同等であったが,左室の拡張は軽度であった.肺動脈楔入圧は高値を示すことから,左室の拡張障害が強い状態と思われる.

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