III-P-6
先天性横隔膜ヘルニアに合併した新生児遷延性肺高血圧症の診断・治療過程における動脈管の役割について
弘前大学医学部小児科
佐藤 工,米坂 勧,高橋 徹,大谷勝記,江渡修司,佐藤 啓,上田知実

【はじめに】先天性横隔膜ヘルニア(CDH)は,高率に合併する新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)に対して緻密な呼吸・循環管理が求められる新生児循環器疾患ともいわれている.今回,最近われわれが経験したCDH 3 例の治療経過のなかで,動脈管(DA)によって得られた循環動態の診断と安定化について検討したので報告する.【症例 1】出生後にCDHと診断された女児.術中(日齢 1)右肺と横隔膜の重度の低形成と肝臓全体のヘルニアを認め,術後右肺の成長は全くみられなかった.術後も等圧のPHが残存し,DAは常に右左短絡優位であった.生後 3 週でBNP 1,730pg/mlと高値であったためPGI2持続静注療法を開始し漸増したところ,DAの左右短絡成分と左室容積が増加し,BNPは有意に低下した.等圧のPHは持続していたが,PGI2による肺血管抵抗の低下が示唆された.【症例 2】胎児診断された男児.NO吸入療法(NO)とPGE1持続静注(PGE1)を併用し,DA血流は右左短絡から両方向性短絡に急速に変化し,左室容積の増大が得られ,速やかに循環動態が改善.日齢 1 に根治術を施行した.【症例 3】胎児診断された女児.症例 2 と同様NOとPGE1を併用し,速やかにDA血流の左右短絡成分と左室容積の増加が得られ,生後 6 時間で根治術を施行した.【まとめ】CDHは術前・術後を通してPPHNの管理が重要であり,DAの開存を維持することでreal timeの循環動態の把握が可能となり,右室圧負荷の軽減と左室前負荷の増加による心拍出量の増加を期待できる.

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