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鉄過剰による不整脈を呈した 2 例
国立成育医療センター循環器科
金子 正英,林 泰佑,江竜 喜彦,進藤 考洋,金 基成,磯田 貴義

鉄過剰は急性(鉄中毒),慢性(ヘモクロマトーシス)ともに心筋障害や不整脈を合併する可能性があり,鉄過剰による不整脈に対する治療の報告は少ない.今回われわれは鉄中毒とヘモクロマトーシスによる不整脈を経験したため報告する.【症例 1】15歳女性,鉄剤1.5gを誤飲した.翌日より嘔吐あり,GOT,GPT 1,300台に上昇のため,近医より当院へ搬送入院した.鉄キレート剤投与,血液透析,血漿交換にて治療を行った.4 日目朝より心拍数180の心室頻拍出現.キシロカイン,マグネシウム,電気ショックを行ったが反応なし.ニフェカラント投与後電気ショックを行ったところ心拍数が180から150に下がった.プロカインアミド投与でQRS幅がワイドになったため中止し,ついで静注アミオダロンを投与したところ投与後 6 時間に洞調律となった.その後心機能の低下,腎不全の進行により永眠した.【症例 2】28歳女性,Fanconi貧血にて定期的な輸血両方を施行されていた.胸痛,倦怠感を主訴に来院.心機能の低下と接合部頻拍を認めた.心不全治療とともにニフェカラントの静注を開始した.開始後徐々に徐拍化が認められたが,完全に消失はしなかった.臨床症状の安定とともに,アミオダロン内服へと変更し,外来経過観察が可能となった.その後心不全の増悪により永眠した.【考察】今回われわれが経験した 2 症例ともカリウム遮断薬による治療が効果的であった.鉄過剰による不整脈症例に対して,カリウム遮断薬が有効である可能性が示唆された.今後の症例の積み重ねが必要である.

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