I-P-2
乳児期重症僧帽弁閉鎖不全症に対する治療戦略の検討
宮城県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
新田 恩1),水城直人1),小澤 晃1),田中高志1),小西章敦2),安達 理2),崔 禎浩2)

【目的】乳児期に発症する重症の僧帽弁閉鎖不全症(MR)はまれな疾患である.当院において最近 5 年間に乳児期に発症した重症MRの治療経験を通し,手術法を含め治療戦略について検討する.【症例】症例は 6 例(男 4,女 2).発症時月齢は 2~ 6 カ月で,体重は 3~8kgであった.全症例とも心奇形の合併はなかった.内訳は,心筋炎からの腱索断裂が 1 例,原因が特定できないうちの 3 症例は感染を契機に急激な心不全症状を来し腱索断裂を認めた症例であった.他の 2 例は原因を特定できず先天性の可能性が高い.術前検査では心エコーにてMR 4 度が 4 例,3 度が 2 例,左室拡張末期径は平均124%Nであった.経過として腱索断裂から急激な心不全症状を来した 4 例は人工呼吸管理を要し,うち 3 例で 2 週間以内に手術が必要であった.もう 1 例は14カ月外来で経過観察し手術を施行している.他の例では経過観察中に感染を契機に心不全症状が出現し,心不全治療後他施設で弁置換術を施行した.1 例は手術未施行である.当院での術式は,人工腱索を用いさらに弁輪縫縮を行った形成術が 2 例.Edge to egdeと弁輪縫縮の併用による形成術が 2 例である.術後観察期間は 4 カ月~4 年 6 カ月である.全例とも生存しており,術後の経過は良好で,心エコー上MRは 3 度が 1 例,2 度が 2 例,1 度が 1 例と改善している.【結語】乳児期に発症した重症MRは,手術が必要であるが弁輪が小さく人工弁の選択が困難であるため積極的な手術介入は慎重に判断されるべきである.当院では最近,心不全治療後に人工腱索による弁形成術を行い良好な経過が得られている.これらの経験を通し乳児期に発症する重症MRの治療法について内科的治療,手術法を含めた治療戦略を検討する.

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