I-P-3
コイル閉鎖を施行した動脈管開存に合併する大動脈肺動脈短絡路
聖マリア病院小児循環器科1),久留米大学病院小児科2)
西野 裕1),須田憲治2),岸本慎太郎2),籠手田雄介2),伊藤晋一1),棚成嘉文1),工藤嘉公1),家村素史2),松石豊次郎2)

【はじめに】近年PDAに対してカテーテル治療が普及している.コイル閉鎖を行う時に合併する体肺動脈短絡路(APCA)に気づくことは少なくない.【目的】コイル閉鎖の対象となったPDAに合併したAPCAの臨床的特徴を検討する.【方法】1998年 6 月~2008年 9 月の10年間に,PDAに対してコイル閉鎖術を施行した16歳未満の146例(男児39例,女児107例)を対象.下行大動脈造影正面像で,異常な体肺動脈短絡をAPCAとして,その有無,還流肺,本数と患者臨床背景や動脈管形態との関連について検討した.なお,当科では心雑音の明らかでないPDAもコイル塞栓の対象としている.【結果】APCAを103例(71%),平均1.7本,計176本認め,APCAの還流肺は右側が多かった(右:左 = 115:61).APCA径は右側が大きかった(右1.0 ± 0.3mm vs. 左0.7 ± 0.2mm, p < 0.0001).APCAあり群は治療時年齢が低く(102例あり群2.3 ± 2.5歳 vs. なし群44例6.2 ± 4.2歳,p < 0.0001),PDA径は小さかった(あり群1.9 ± 1.1mm vs. なし群2.3 ± 1.3mm, p < 0.03)が,Qp/Qsに有意差はなかった.さらに,ampullaの中点からPDAの反対側までの距離を体表面積で割ったものをPDAの長さの指標とした場合,APCAあり群は大きかった(あり群101例16.6 ± 8.1mm/m2 vs. なし群40例12.5 ± 7.8mm/m2,p < 0.01).APCAが低年齢で多かったため,4 歳未満の症例103例についてAPCAの検討をすると,APCAあり群でQp/Qsは小さく(あり群87例1.7 ± 1.1 vs. なし群15例2.1 ± 0.8, p < 0.01),PDA径は小さかった(あり群1.9 ± 1.1mm vs. なし群2.8 ± 1.2mm, p < 0.01).また,APCAの本数はQp/Qsと逆相関(R = 0.21・p < 0.04)を示した.【まとめ】コイル塞栓術を施行したPDAにAPCAを合併することは多く,それは右側に多く,大きい.PDAの形態としては細長いもので,Qp/Qsの少ないものほどAPCAを合併しやすい.こういった細長いPDAとAPCAはいずれの血管も肺血流を増加させるものであり,共通した発生機序の関与の可能性がある.

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