I-P-4
2 歳未満に手術を要した心房中隔欠損の検討
北海道立子ども総合医療・療育センター循環器科1),札幌医科大学小児科2)
高室基樹1,2),横澤正人1),畠山欣也1),阿部なお美1),長谷山圭司2),堀田智仙2)

【背景】乳幼児期に症状を呈する心房中隔欠損(ASD)はまれだが,体重増加不良や気道症状で 2 歳までに手術が行われる例も存在する.【目的】2 歳未満に手術となったASDの特徴を明らかにする.【方法】2002~2008年,当科で手術適応として心臓カテーテル検査が行われた 2 歳未満のASD 13例(うち 6 例がダウン症候群)を対象.経胸壁エコーによるASD長径,短径および体表面積(BSA)補正値,平均肺動脈圧(mPAP),肺体血流比(Qp/Qs),肺血管抵抗(Rp),右室および左室拡張末期容積(%RVEDV, %LVEDV),心係数(CI)を求めた.またエコーおよび心臓カテーテル検査による血行動態指標を同時期に行われた 2 歳以上の37例と比較した.検定はt検定とχ2検定でp < 0.05を有意とした.【結果】2 歳未満群は検査時月齢 5~20カ月(中央値11カ月).体重3.5~9.1(平均6.6)kg.手術適応は肺高血圧を疑われた 1 例を除きいずれも体重増加不良と気道感染反復であった.ASD長径は4.7~18.4(平均12.2)mmで,長径/BSA15~65(平均37)mm/m2.短径は4.7~16.9(平均10.9)mmで短径/BSA15~48(平均33)mm/m2.mPAPは12~37(平均23)mmHg,Qp/Qsは1.2~2.9(平均2.2),Rpは0.7~3.5(平均1.9)単位・m2,%RVEDVは122~218(平均174%, %LVEDVは63~138(平均96%),1 回拍出量/BSAは19~47(平均29)ml,CIは2.4~6.1(平均3.8)l/min/m2であった.2 歳未満群と以上群で有意差が出たのはmPAP(23 vs 17, p = 0.01),Rp(1.8 vs 1.3, p = 0.03),長径/BSA(37 vs 24, p = 0.01),短径/BSA(33 vs 17, p < 0.01)であった.2 歳未満群の予測値を径/BSA値25以上として検定すると,長径は有意差なく,短径は感度63%,特異度88%(p = 0.001)であった.【考察・結論】2 歳未満で手術を要するASDは体格に比し径が大きく肺高血圧を来しやすい.エコーでASD短径/BSAが25を超える場合,早期の手術を要する可能性が高い.この値は成人で短径41mm相当で,Amplatzerの適応から外れる.

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