I-P-7
成人期へ移行したMarfan症候群の表現型の検討
慶應義塾大学医学部小児科1),川崎市立川崎病院小児科2)
前田 潤1),潟山亮平1),古道一樹1),土橋隆俊1),福島裕之1),山下行雄2),山岸敬幸1)

【背景】Marfan症候群(MFS)は,心大血管病変,骨格,眼,肺病変を呈し,経年的に進行する傾向がある.そのためMFS症例においては,これらの臓器について長期間にわたる経過観察が必要である.【目的】成人期に移行したMFS症例の表現型を検討する.【対象と方法】小児期にMFSと診断され,当科循環器外来で16歳以降まで経過観察された19名(男 6 名,女13名,16~38歳)を対象とした.MFSの診断はGhent診断基準を用いて行われ,循環器診療に携わる 2 名の臨床遺伝専門医により確認された.心疾患を含む表現型,治療,転帰について後方視的に検討した.【結果】MFSの家族歴は19例中 7 例(37%)に認められた.19例中18例(95%)に大動脈弁輪部拡張・上行大動脈拡張(AAE)を認めた.AAE19例中 5 例(26%)に対して,思春期以降に上行大動脈置換術(Bentall法 3 例,Yacoub法 2 例)が行われ,そのうち 1 例は手術 4 年後に下行大動脈解離により突然死した.未手術AAE 14例中 3 例(21%)でβ遮断薬が用いられ,そのうち 1 例はAAEが進行したため,ロサルタンの併用が開始された.また,19例中13例(68%)に僧帽弁逸脱(MVP)が認められ,MVP18例中 2 例(11%)で僧帽弁閉鎖不全が進行し,思春期以降に弁置換術を要した.MFS19例中11例(58%)に脊柱側彎が認められ,11例中 5 例(45%)の側彎進行に対し脊柱固定術が行われた.19例中 5 例(26%)に水晶体亜脱臼を,4 例(21%)に自然気胸を認め,おのおの 2 例(40%,50%)に手術が行われた.【結語】成人期に移行したMFSでは,AAEの頻度が高い.病状の進行,治療に対する反応性には個体差があり,よりよい長期管理のために,今後,遺伝子型の検討を含めた大規模研究が必要と考えられる.また,側彎,眼,肺病変合併症例では手術治療を考慮する場合があり,早期から他科との連携が必要である.

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