I-P-8
当科で経験したトリソミー18に合併した先天性心疾患への対応の検討
鳥取大学医学部周産期小児医学
船田裕昭,倉信裕樹,橋田祐一郎,美野陽一,辻 靖博,神崎 晋

【はじめに】トリソミー18は約8,000人に 1 人の頻度で出生する染色体異常症であり,多くは致死的である.先天性心疾患を合併することが多いが,その生命予後の悪さから積極的治療を差し控えられることが多い.しかし,近年では「重篤な疾患を持つ新生児の家族と医療スタッフの話し合いのガイドライン」が作成されるなど児の状態や家族の意見を考慮した個別の管理方針が求められている.【対象】1991~2008年に当院新生児医療センターで入院管理したトリソミー18児の14例(男児 6 例,女児 8 例)を対象とした.核型はfull trisomyが12例,転座型が 2 例.現在まで 1 例のみ生存,死亡例の平均生存期間は46.3日であった(100日以上の長期生存例は 4 例).【結果】全例が先天性心疾患を合併し,内訳はVSD単独 3 例,DORV 1 例,CoA + VSD 2 例,VSD + ASD + PDA 4 例,HLHS 1 例,large PDA 1 例であった.外科的治療を選択したのはlarge PDAの 1 例のみであり,内科的治療にて改善なく,心不全が進行したため日齢48にPDA ligationを施行,現在は在宅医療に移行している.CoA + VSDの 1 例は手術目的で転院後にトリソミー18が確定されたため手術を行わず,日齢35に死亡した.【考案】トリソミー18児に対する手術適応は家族の同意とともに手術により生命予後を改善させる症例に限るとの意見がある.しかし,一方では当科で経験した転座型の 1 例のように長期生存例も存在し,外科的治療により予後改善が期待できる場合もある.当科でのトリソミー18児に対する侵襲的治療は原則行わない方針としているが,長期生存例がいずれもVSD, PDAなど肺血流増多型の心疾患合併例であり,症例ごとにPA banding等の姑息術による予後改善の可能性につき検討を行う必要があると考えられた.

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