I-P-10
成人期まで経過観察し得ているShpritzen-Goldberg症候群の 1 例
久留米大学医学部小児科1),久留米大学循環器病研究所2)
寺町陽三1),家村素史2),岸本慎太郎1),西野 裕1),前野泰樹1),須田憲治1),松石豊次郎1)

【背景】Shpritzen-Goldberg症候群は常染色体優性の形式をとり,Marfan症候群様の体型,精神遅滞,頭蓋骨癒合,心血管病変などを主徴とするまれな症候群で,現在まで十数例の報告がなされているが,成人例の報告はなく,長期生命予後は不明である.今回,上記診断にて長期経過観察中に右冠動脈瘤を形成し,現在経過観察中の症例を経験したので報告する.【症例】症例は22歳,男性.身長186cm,体重74.6kg.生後 2 カ月までは発育,発達に異常を認めなかった.近医に受診の際,体重増加不良を認めるが,身長は継続的に伸びており,2 歳時にMarfan症候群疑いで当科紹介となった.その後,3 歳時より心雑音出現,大動脈弁輪拡張による閉鎖不全を認め,内服にてコントロールするも,9 歳時,大動脈弁輪拡大(35mm),閉鎖不全(3°)と心不全コントロール不良のため,10歳時に人工弁(23mm)置換術施行.その際,特徴的な症状よりShpritzen-Goldberg症候群と診断された.その後再度心雑音の増強,心不全症状出現,心エコーにて僧帽弁逸脱,閉鎖不全(4°)認めたため,14歳時に僧帽弁置換術(31mm)を施行,以後,抗凝固療法等により外来経過観察中であった.22歳時,外来での弁単純写真にて僧帽弁の可動制限を認め,血栓溶解療法目的に入院となった.人工弁の可動制限は軽快したが,完全開放までは改善しないため,CTを施行,僧帽弁左房後壁側にpannus like tissueを認め,また右冠動脈瘤(20mm)を認めている.無症候性でもあり,2 回の開胸手術を行っていることなどを考慮して,外科的治療を施行せず,抗凝固療法を強化して現在も外来にて経過観察中である.Shpritzen-Goldberg症候群は心血管病変はMarfan症候群様の経過をたどると考えているが,症例が少ないために長期予後が不明で,他の合併症を起こすことも考えられ,より注意深い観察が必要と考える.

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