I-P-11
当院における過去12年間の胎児心臓エコーの実施状況とその医療貢献について
九州厚生年金病院小児科
岸本小百合,大野拓郎,倉岡彩子,熊本 崇,原 卓也,上田 誠,弓削哲二,渡辺まみ江,城尾邦隆

【背景】先天性心疾患(CHD)はわが国の乳児死亡原因において染色体異常に次いで依然 2 位を占めるが出生直後からの集約的治療で予後を改善できる可能性も高い.当院の胎児心エコーは2007年に先進医療として承認された.本検査の有用性と今後の課題について考察した.【対象】1997~2008年に胎児心エコースクリーニングで異常を指摘され当院で胎児心エコーを施行した82例(男43女38,1 例は妊娠中絶で不明).当院での初回検査週数は19~39(中央値32)週,出生週数30~41(m38)週,出生体重819~4,002(m2,587)g.分娩様式は自然分娩35,誘導分娩 26,予定帝王切開(C/S)10,緊急C/S 9.【方法】(1)年代別新生児CHD入院に占める胎児診断症例数と診断週数の推移,(2)出生後診断ならびに一致率,(3)出生後早期の治療内容,(4)予後について検討した.【結果】(1)CHD児における胎児診断率は1997年の 7%から2008年の31%(全新生児入院の1.0→7.7%)と増加.診断週数は1997年の平均36週から2007年33.5週,2008年30週へと早期化している.(2)出生後診断はDORV 13, ECD 11, TOF 7, D-TGA 5, PA.IVS 5, HLHS 4 等.全症例での診断一致率は57%.心外合併奇形は19(23%)で18トリソミー 8, 13トリソミー 1, 21トリソミー 1, 口唇口蓋裂 3, 消化管異常 2 等だった. (3)日齢 0 に行った治療はPGE1製剤投与が41(49%),カテーテル治療は 2(2.4%)でcritical AS 1(生後 4 時間),HLHS 1(生後 4 時間),PMIをTOF合併のCAVB(HR 55/min) 1 に施行. (4)死亡は20,新生児期死亡は 7 で 3(15%)は18トリソミー,他は出生直後のEbstein奇形が 1,HLHSとAbsent PV,PA.IVSが初回術後に死亡.【考察】複数の産科医と小児循環器科医,両者を仲介する胎児診断医が携わる当院の検査体制は,より早期からの治療介入を可能にしつつある.染色体異常合併による新生児期死亡例も多く予後や出生前の家族への貢献度の評価は継続した検討を要し,ピアカウンセリング体制設置も今後の課題と考えられる.

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