I-P-12
当院新生児入院における胎児心エコー検査の有用性の検討—新生児危急的心疾患を中心に—
国立循環器病センター小児循環器診療部1),周産期治療部2)
内山敬達1),黒嵜健一1),北野正尚1),坂口平馬1),池田智明2)

【目的】胎児心エコー検査の有用性について新生児期危急的心疾患を中心に検討を行う.【対象と方法】2007年 4 月~2008年12月に国立循環器病センター小児循環器診療部に新生児期入院した心疾患患児90例(入院時日齢;中央値 0,最大値25)を対象とした.胎児心エコー検査施行群,未施行群において疾患分類,治療,転帰を診療録より後方視的に比較検討した.【結果】胎児心エコー施行群は37例(41%),未施行群は53例(59%)であった.危急的心疾患としての動脈管依存性疾患は23例(27%)であった.このうち動脈管依存性体循環疾患は11例(12%)で,胎児心エコー施行群は 7 例,未施行群 4 例であった.動脈管依存性肺循環疾患は12 例(15%)で,胎児心エコー施行群は 4 例,未施行群は 8 例であった.胎児心エコー施行群11例は全例とも日齢 0 でプロスタグランジンE1の持続静注を開始しており,動脈管閉鎖による重度低酸素血症や体循環不全を呈した例はなかった.胎児心エコー未施行群12例では,大動脈縮窄の 1 例が入院時に動脈管閉鎖を認め緊急手術となった.プロスタグランジンE1開始は平均日齢0.5日(中央値 1,最大値 1)であった.総肺静脈還流異常(複合疾患も含む) 7 例は全例が胎児心エコー未施行群で,うち 1 例が肺静脈閉鎖によるショック症状を呈し緊急入院,手術となった.完全大血管転位 1 型 7 例では 3 例が胎児心エコー施行群,4 例が未施行群であった.施行群の 1 例が出生直後より重度の心筋収縮力低下を認め死亡したが,胎内で動脈管の収縮,卵円孔の狭小化を認めた症例はなかった.胎児心エコー未施行群でも,著しい低酸素血症を認め入院時直ちにBASを必要とした症例はみられなかった.【結論】胎児心エコー未施行例において,大動脈縮窄が動脈管閉鎖のため,総肺静脈還流異常が肺静脈閉鎖のため緊急手術となった.胎児心エコーでの出生前診断で安定した術前管理が可能な例と思われた.

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