I-P-13
Stress-velocity関係と組織ドプラ法による低出生体重児の心機能評価
獨協医科大学小児科
宮本健志,坪井龍生,鈴村 宏,有阪 治

【背景】出生直後の低出生体重児では,胎盤循環閉鎖による後負荷増大が起こり,左室拡大,駆出率低下をみることがある.また,成人領域においては,組織ドプラ法による心拡張能評価が導入されつつあるが,低出生体重児の心機能評価として有用であるかは報告が少ない.【目的】今回われわれは,後負荷の評価として収縮末期左室壁応力(ESWS)と心拍補正左室平均円周短縮速度(mVcfc)からなるstress-velocity関係および組織ドプラによる左室拡張能評価を基に,低出生体重児の心機能評価を行い,それらの検査が,低出生体重児の心不全時の心機能評価に有用であるか,また心機能低下に関連するリスクファクターについて検討した.【方法】対象は2008年 1~4 月に獨協医科大学病院周産期センターに入院した31例の新生児を,左室駆出率低下群11例(EF55%未満,在胎週数33~37週,出生体重1,524~2,235g)と左室駆出率正常群20例(EF55%以上,在胎週数30~38週,出生体重1,584~2,450g)に分けて検討した.【結果】EF低下群のmVcfcはEF正常群と比べて有意に低値を示した.EF低下群のESWSはEF正常群と比べて有意に高値を示した.EF低下群とEF正常群の間で,拡張早期僧帽弁輪最大移動速度(Ea),心房収縮期僧帽弁輪最大移動速度(Aa),拡張早期僧帽弁口最大血流速度/Ea(E/Ea)は有意な差を認めなかった.子宮内発育遅延児はappropriate for gestational age児と比べて,有意にEF低下群に多く認めた.【考察】出生直後の低出生体重児における左室駆出率低下は,stress-velocity関係で評価される後負荷増大と関連があり,一方で左室駆出率低下と組織ドプラ法による左室拡張能評価とは関連がないことが分かった.それら,左室駆出率低下を認める低出生体重児には,心機能予備能力の低い子宮内発育遅延児が多く含まれることが分かった.

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