I-P-14
肺動脈弁欠損症候群(APVS)を伴うファロー四徴症(TF)の臨床像と胎児心エコー所見
聖隷浜松病院小児科1),心臓血管外科2)
中嶌八隅1),武田 紹1),小出昌秋2),渡邊一正2)

【背景】APVSの重症度は大きな幅があり,重症例は生直後より呼吸障害を発症する.胎児心エコーより重症度を推測する指標はいくつか報告されているが,確立されたものがない.【目的】胎児期より観察したAPVS,TF 3 例の胎児心エコー所見と,臨床経過を検討する.【方法】在胎26週以降の胎児心エコーより,肺動脈血流速度,肺動脈弁内径(IPV),外径(OPV),左右肺動脈径,心胸郭断面積比(CTAR)を計測した.四腔断層像より左心室(LV),右心室(RV)の拡張末期面積,収縮末期面積を計測し,area shortening fraction(a-SF)を算出した.【結果】胎内死亡はなかった.生直後より呼吸障害を呈したのは 2 例だった.A;未手術で生後27日に死亡した.B;生後 3 カ月で心内修復術を行ったが,術後15日に死亡した.生直後呼吸障害がなかったものは 1 例で,生後 2 カ月で呼吸不全を発症した.4 カ月時に心内修復術を行い,生存している(C).羊水過多症を認めたものはCのみだった.肺動脈弁逆流は全例severeだった.肺動脈弁血流速度はA 2.9m/s,B 3.4m/s,C 2.7m/sだった.IPV/OPVはA 0.42,B 0.33,C 0.43だった.左右肺動脈径(Z-score)A:(GA 26wk) rt 12.4mm(21.2),lt 11.4mm(19.4)で,GA 33wk rt 15.5mm(20.8),lt 13.2mm(18.6)に拡張した.B:(GA 37wk) rt 13mm(19.0),lt 16.5mm(19.1).C:(GA 31wk) rt 6.5mm(16.4),lt 6.4mm(15.3)でGA 37wk rt 11mm(18.1),lt 10mm(16.5)に拡張した.CTARはA 51%,B 43%,C 26%だった.RV a-SFはA 0.28,B 0.46,C 0.37だった.LV a-SFはA 0.39,B 0.49,C 0.42だった.【考察】3 症例では肺動脈弁の弁口,狭窄の重症度と臨床経過に一定の傾向はなかったが,生下時より呼吸障害を認めた症例は,胎生期より著明な左右肺動脈の拡張,心拡大を認めた.しかし左右肺動脈の週数による変化率には差を認めなかった.また新生児死亡した症例では左心室収縮能は保たれていたが,右心室収縮障害を認めた.

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