I-P-16
MDCTを用いたSTS-minIP(sliding-thin-slab minimum intensity projection)は,肺血管抵抗の上昇・肺高血圧を検出できる
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部小児医学分野
早渕康信,井上美紀,阪田美穂,渡辺典子,香美祥二

【背景】MDCT(multidetector-row CT)を用いたminIP(minimum intensity projection)は肺気腫など低吸収域を明瞭に描出することを目的に利用されることが多い.しかし,高吸収領域で示される肺動静脈を除き,肺間質や肺血管床の状態を観察することにも利用できる.一方,肺高血圧症では原発性,血栓性,Eisenmenger症候群等の成因にかかわらず,肺血流シンチグラムの異常所見が認められるとされている.MDCTは低侵襲性等から乳幼児期先天性心疾患症例においても使用される頻度が増加しているが,心血管構造の診断を行うと同時に,肺血管床の状態が評価できれば,一回の施行における臨床的有用性は高くなる.【目的】先天性心疾患症例におけるSTS-minIPの肺血管床,肺動脈圧の評価に関する有用性を検討する.【方法】対象は,MDCTに加え,肺血流シンチ,心臓カテーテル検査を施行した先天性心疾患50例である.STS-minIP,肺血流シンチおのおのにおける肺血流分布パターンを,A群:肺野全体が均一である,B群:軽度の不均一群,C群:モザイクを呈する群の 3 群に分類し,各群における平均肺動脈圧,肺血管抵抗を検討した.MDCTは,Toshiba Aquilion16,肺血流シンチは,Toshiba E.CAMを用いて撮影した.【結果】minIPでは,A群38例,B群 7 例,C群 5 例であった.肺血流シンチグラムでは,A群43例,B群 5 例,C群 2 例であり,50症例中43例(86%)において,minIPとシンチグラムの所見は一致したが,minIPのほうが灌流の不均一性が強く表現される傾向が認められた.minIPでは,各群における平均肺動脈圧は,14.2 ± 3.7, 16.0 ± 4.8, 22.8 ± 3.7mmHg(p < 0.01),肺血管抵抗は,1.3 ± 0.6, 1.8 ± 0.4, 3.3 ± 0.9U・m2(p < 0.01)であり,重症度に比例していたが,シンチグラムでは有意差が認められなかった.【結語】STS-minIPは肺血流シンチを反映したが,シンチグラムより鋭敏に肺血管床の状態・肺高血圧を検出できるものと考えられた.

閉じる