I-P-18
心臓腫瘍による新生児血流閉塞障害評価法としての3D心臓超音波検査の有用性—結節性硬化症に伴う新生児多発心臓腫瘍での経験—
芳賀赤十字病院小児科1),自治医科大学小児科2)
松原大輔1),保科 優1,2),菊池 豊1)

【背景】結節性硬化症の約50%に心臓腫瘍が合併するといわれている.腫瘍は多発することも多く,また,近年胎児期のエコー検査にて偶然発見される症例も多い.多くは無症状であり,自然消退する傾向があるが,新生児期から不整脈,心不全などを呈することもあり,正確迅速に腫瘍の大きさ,部位などを判定する必要がある.しかし,新生児期において,これまでの2D心臓超音波検査(以下2D)では腫瘍の位置関係を正確に評価することは難しく,特に流出路障害の有無を正確に評価することは困難であった.今回,胎児期からその存在を指摘されていた心臓腫瘍を有する新生児に対して,3D超音波断層装置(以下3D)を用いて,心臓腫瘍の立体構築を試みた.【目的】3Dを用いて,新生児期の多発する心臓腫瘍の立体構築像を明示し,腫瘍による流出路障害の有無を評価する.【方法】3Dを,以下の臨床背景を有する新生児に対して施行した.母体29歳,結節性硬化症.胎児期より2Dにて多発心臓腫瘍が確認されていた.39週 2 日,筋腫合併妊娠のため予定帝王切開術にて出生.2,202g,Apgar8-9-9.出生後すぐに,2Dを施行後,Philips社製iE33超音波断層装置を用いて,3Dを施行した.【結果】2Dでは,左室に 2 個,右室に 4 個の心臓腫瘍を認めた.特に左室自由壁に存在する最大径(4×5mm)の腫瘍は収縮期の流出路障害の評価が困難であった.左室壁運動は良好.心内奇形なし.3Dでは,腫瘍の形態を構築でき,左右流出路障害のないことを確認できた.その後の経過でも,不整脈や心不全なく,血圧,酸素化も正常であった.【考察】今症例において,3Dは心臓腫瘍の詳細な立体構築表示に有用であるが,症例数を増加させ,流出路障害のある症例に対しても検討することが必要である.【結論】3Dは,新生児期の結節性硬化症に伴う多発心臓腫瘍の血流閉塞障害の評価法として有用であると示唆された.

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