【背景・目的】造影法によるマルチスライスCT（MDCT）の三次元（3D）画像は，先天性心疾患の診断治療に有益だが，心血管管腔面を立体的に表現する点では十分ではない．今回，心臓電気生理学的検査装置CARTO^TM XPシステム（Biosense Webster Inc.）のCARTO MERGE^TM Image Integration Softwareによる肺静脈還流異常症APVDの肺静脈と周辺構造物の3D画像描出を試みた．【方法】Toshiba Aquilion16によるMDCTデータ（心電図同期も息こらえも要求しない末梢静脈造影法；イオパミロン300，2ml/kg）をDICOM3形式で記録し，データをCARTO^TM XPシステムに取り込んだ．CARTO MERGE^TM Softwareを用いた3D画像から必要な部位（心腔・血管）を半自動かつ任意に選択した後，そのclipping plane機能とtransparency機能によってAPVDの肺静脈と周辺構造物の3D画像構築を試み，術中所見と比較した．【症例 1】1 カ月男児，体重3.9kg，TAPVD-Ia【症例 2】1 カ月男児，体重3.3kg，TAPVD-Ib【症例 3】13歳女児，体重28kg，TAPVD-IIb修復後 + Ib残存【症例 4】4 歳女児，体重16kg，PAPVD（右上PV-SVC還流型） + ASD（静脈洞型）【症例 5】2 カ月男児，体重3.7kg，PAPVD（全右PV-SVC還流型） + ASD（二次孔型）【結果・考案】CARTO^TM XPシステムを用いた3D画像は，PVの異常還流，右心房，左心房，ASD，SVCおよび気管といった周辺組織の位置関係を，臓器外表のみならず管腔面からも描出可能で，その3D像所見は術中所見と極めて類似していた．操作上，Image Integrationには当然解剖学的な基礎知識が必要であるが，本法による3D画像は，心エコー図の描出断面の確認，カテーテル治療および外科手術のシミュレーションなどに極めて有用な診断補助手段となり得ると考えられる．