I-P-22
経皮的心房中隔欠損閉鎖術を施行された小児における僧帽弁形態の三次元的変化—real-time 3Dエコーを用いた解析—
長野県立こども病院循環器科
田澤星一,井上奈緒,中野裕介,武井黄太,梶村いちげ,瀧聞浄宏,安河内聰,梅津健太郎,坂本貴彦,原田順和

【背景】経皮的心房中隔欠損症閉鎖術(ASO)の施行前後において左室拡張末期容積(LVEDV)は術直後より増大傾向を示し,施行 6カ月後以降には LVEDVはほぼ正常に復する.この時,僧帽弁の三次元的形態がどのように変化するのかは知られていない.【目的】心房中隔欠損症におけるASO施行前後の僧帽弁形態の変化をreal-time 3Dエコー(RT3DE)を用いて検討すること.【対象】当院にてASOを施行された24症例(9.8 ± 3.9歳,体重31.5 ± 14.6kg,体表面積1.08 ± 0.32m2,Qp/Qs2.2 ± 0.7).【方法】ASO施行前および施行後(6~12カ月後)に,Philips社iE33,X7-2またはX3-1プローブを用いて心尖部および傍胸骨四腔像をRT3DEのfull volumeで記録.REALVIEW®(ワイディ社)を使用して収縮中期における僧帽弁の弁口面積,弁輪高,tenting height(max/mean),tenting volume,prolapse volumeを算出した.ASD閉鎖前後の変化を解析し,正常対照(N群,6 例)と比較した.【結果】ASO施行前とN群との比較では,僧帽弁前尖弁葉の陥凹によりprolapse volume(0.33 ± 0.22 vs 0.01 ± 0.01cm3/m2,p < 0.01)は大であり,max tenting height(2.81 ± 1.0 vs 6.36 ± 3.4mm/m2)およびmean tenting height(0.08 ± 0.8 vs 3.59 ± 1.1mm/m2,p < 0.05)は低値を示した.弁口面積,弁輪高は差がなく,tenting volumeはASO群で低値の傾向はあるが有意差は認めなかった(p = 0.097).ASO施行前後ではmean tenting heightは有意に増加(0.04 ± 0.9 vs 0.77 ± 0.95mm/m2,p < 0.01)し,prolapse volumeは減少(0.26 ± 0.2 vs 0.15 ± 0.2cm3/m2,p < 0.01)した.この時,RT3DEによるLVEDVは増大し(35.7 ± 7.9 vs 44.7 ± 7.9ml/m2,p < 0.01),収縮中期における左室長径も増加していた(52.5 ± 10.4 vs 56.6 ± 8.7cm/m2,p < 0.01).【結語】ASDの小児では僧帽弁弁葉の逸脱が生じ弁の3D構造は正常と異なっていた.また,ASO後には左室容積と左室長の増加に伴い弁葉の逸脱は軽減し正常に復する.

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