I-P-23
両側肺動脈絞扼術のサイズ決定における肺静脈血流プロフィールの有用性
東京女子医科大学麻酔科1),新潟大学大学院医歯学総合研究科麻酔科学分野2)
黒川 智1),種岡美紀2),富田優子1),野村 実1)

【背景】左心低形成症候群および類似の血行動態を示す疾患群において,近年,Norwood型手術に先行して,動脈管を開存する手段と組み合わせて両側肺動脈絞扼術(bil. PAB)が第一期手術として選択され得る.これまでbil. PABの絞扼サイズ決定には,術野エコーによる毎秒 3 メートル以上の左右絞扼部でのピーク流速検出が指標となることが報告された.しかしながら,この方法では肺動脈の圧迫の影響などが危惧される.われわれは,従来の肺動脈絞扼術(PAB)における絞扼サイズ決定の経験を参考に,術中経食道心エコー(TEE)による肺静脈血流プロフィール(PV return)に基づいた絞扼サイズ決定の有用性を 6 例のbil. PABで検討した.【対象および方法】症例は日齢 4 日~2 カ月,体重2.4~3.0kg.1 例目の経験を通して,調整手技中は肺動脈血流が検出できないこと,微妙な調整によってもピーク流速の変化が大きく,サイズ調整が難しいことが判明した.従来のPABでは適正サイズの絞扼後には,PV returnがPAB前に比較しておおまかに50~60%に低下することを確認していたことから,この指標をbil. PABに適用した.【結果】全例で左右PV血流は検出可能であり,本指標に基づいたサイズ調整が可能であった.絞扼部の血流は左側の43%(3/7)で検出不能であり,絞扼部ピーク血流が毎秒 3 メートルを超えたのは40%(4/10)であった.動脈剥離中に心室膨満を認めることも多く,絞扼中の突然の血流途絶は43%(6/14)に認められた.5 例が第二期手術に到達した.【結語】Bil. PABにおける至適絞扼サイズ決定には,PV returnに着目したTEE評価が有用であり,絞扼サイズの調整中にも持続的に血流変化の情報が得られる点で,特に術野エコーに比較して優れている.

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