I-P-28
SCN5A変異を有するBrugada症候群の 2 幼児例
土浦協同病院小児科
渡部誠一,細川 奨,石井 卓

SCN5A変異を有するBrugada症候群(BS)の 2 幼児例において,特徴的な所見を認めたので報告する.【症例 1】現在 2 歳11カ月の女子.膜様部流出路伸展型心室中隔欠損 8mm(Qp/Qs = 4.20,平均Pp/Ps = 0.60,Rp = 2.4)に対して生後 2 カ月時に心内修復術を施行.術前と術後 3 カ月時までの心電図ではBS波形を認めず,術後 3 カ月からcoved波形を示した.V1のR波が減高し,I誘導のS波が深く,VSD術後であるためRBBBとの鑑別が問題になった. 2 歳 3 カ月時pilsicainide(PIL)負荷試験陽性でBSと確定.その後に父親(26歳)もBSと診断, 父親はRV流出路pacingでpolymorphic VT・VFが誘発されICD植込を行った.父子ともにSCN5A変異が判明した.【症例 2】現在 5 歳11カ月の女子.6 カ月時に発熱17時間後の明け方にあえぎ呼吸で救急外来受診,VTからVF/electrical stormとなりlidocaine,verapamil,ATP,propranolol無効,magnesol一部有効,DCを25回要した.一部coved波形を認め,BSを疑ったが,その後,BS波形を認めなくなり,I誘導に深いS波を認め,確定には至らなかった.Electrical stormであったのでPIL負荷試験は控えた.4 歳 2 カ月時,発熱 5 日目に痙攣で救急搬送,VFにて心肺蘇生,DCを要した.遺伝子検査でSCN5A変異が判明した.非発熱時はBS波形を認めず,高位右胸部誘導で時折認めるのみである.発熱時にV1のR波の減高とJ波の顕著化が出現する.現在ICDを検討中で,発熱時には入院経過観察としている.母親もBS疑いで検査中.【考察】2 例ともV1のR波が0~0.1mVで,J波が顕著化し,coved波形を示す.I誘導の深いS波はRBBBと,V1のR波減高あるいはQ波に近い波形は梗塞・心筋炎との鑑別を要する.症例 1 は心臓手術後にBS波形となり,症例 2 は発熱時にのみBS波形が明瞭化しVFへ進展する.BSの発熱時の悪化は近年注目されているが,2 症例の波形と臨床的特徴がSCN5A変異を有するBS小児に多いかは今後の症例の蓄積が必要と思われる.

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