I-P-30
新生児期・乳児期早期における器質的心疾患のない頻脈性不整脈の検討
東京都立清瀬小児病院新生児科1),循環器科2)
永沼 卓1,2),三浦 大2),玉目琢也2),知念詩乃2),松岡 恵2),大木寛生2),佐藤正昭2)

【目的】新生児期・乳児期早期の頻脈性不整脈は,重症化し致死的になることもあるが,診療方針は確立されていない.その適切な管理法を明らかにするため,当院で経験した症例の臨床経過を検討した.【方法】1975~2008年に入院した新生児~生後 3 カ月未満の乳児のうち,器質的心疾患のない上室性頻拍22例,心室性頻拍 4 例,計26例の診断,治療,予防,予後について後方視的に調査した.【結果】(1)診断:上室性は,発作性上室頻拍(PSVT)12例(うち 3 例は顕性WPW症候群),異所性心房頻拍(EAT)6例,心房粗動(AFL)4 例であった.心室性は,心室頻拍(VT)2 例,先天性QT延長症候群(LQTS)2 例(1 例は合指症ありTimothy症候群疑い)であった.(2)治療:PSVTには,1987年以前はジゴキシン(4 例),以降はATP(5 例)を投与で軽快した.EATにはβ遮断薬(6 例)内服を行った.AFLは,2 例をジゴキシンで,最近の 2 例を電気的除粗動で治療した.VTの 1 例はジソピラミドとフェニトインで,1 例はリドカインで消失した.(3)予防:上室性には,ジゴキシン(12例),ジソピラミド(2 例),β遮断薬(9 例)などを 6 カ月~1 年間(10例),2 年間(3 例)投与した(4 例は追跡なし).VTの 1 例は予防しなかった(1 例は追跡なし).LQTSは 1 例のみにβ遮断薬を投与した.(4)予後:上室性頻拍では,再発を 3 例のみに認めた(2 カ月,1 歳 1 カ月,8 歳).追跡し得たVTの 1 例では再発がなかったが,LQTSの 2 例はいずれも突然死した.【考察】新生児期・乳児期早期の上室性頻拍は,薬物療法などで全例軽快し,多くは再発を認めなかった.心室性頻拍のうちLQTSの予後は不良で,積極的治療と注意深い経過観察が必要と考えられた.

閉じる