I-P-32
先天性完全房室ブロックペースメーカー植え込み術後,乳児期に心不全を発症した症例の検討
国立成育医療センター循環器科1),筑波大学附属病院小児科2)
金子正英1),林 泰佑1),朝海廣子1),金 基成1),賀藤 均1),堀米仁志2)

【背景】先天性完全房室ブロック(CAVB)にペースメーカー植え込み(PMI)後,心不全に至る例がある.最近当院にてPMI後 1 年以内の心不全発症例を経験したが,同様の報告はほとんどない.【目的】当院にて2002~2008年の間にPMI施行したCAVB症例 9 例中,乳児期心不全に至った 3 例を後方視的に調べ,PMI後の乳児期発症心不全の背景を検討した.【症例 1】10カ月女児.在胎26週でCAVBと診断.母体SS-A抗体陽性.出生後心拍数はイソプロテレノール(ISP)投与にて80/分を維持したが,左室駆出分画(LVEF)50%と低下し,ステロイドパルス施行し心機能改善した.日齢77,PMI施行.経過良好だったが生後 8 カ月LVEF30%台に低下.心不全治療を行うも増悪を続けたため10カ月でCRT療法施行.【症例 2】1 歳 4 カ月女児,在胎29週でCAVBと診断.母体SS-A抗体陽性.出生後ISP使用するが,一時的効果であったため一時的ぺーシング施行.日齢49にPMI施行.11カ月時に急性心不全にて入院.ECMO治療を経て救命できたが,心機能低下,dyssynchrony強く,カテコラミン依存状態が続いたため,1 歳 3カ月時にCRT療法を施行.【症例 3】4 カ月女児.在胎23週CAVBと診断.母体SS-A,B抗体陰性. ISPで心拍は維持したが,EF50%程度であった.日齢10,PMI施行.直後はEF 54%であったが徐々に低下,心不全治療を行うも改善なく死亡した.【結果】PMI施行 9 例中 6 例,心不全発症 3 例中 2 例でSS-A抗体陽性であった.CRT療法は 2 例に施行し,術後経過は現在のところ安定している.【考察】明らかなSS-A抗体と心不全の関連は得られなかった.CAVB症例は,最初の 1 年の慎重な経過観察が必要と考えられた.CRT療法は心不全の進行を止められる可能性はある.

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