I-P-33
右冠動脈起始異常を伴ったカテコラミン感受性多形性心室頻拍(CPVT)の13歳女児例
高知大学医学部小児思春期医学1),幡多けんみん病院小児科2)
高杉尚志1),玉城 渉1),藤枝幹也1),脇口 宏1),寺内芳彦2)

【はじめに】若年者の突然死の原因として,冠動脈起始異常と不整脈疾患は重要である.われわれは右冠動脈起始異常を伴ったカテコラミン感受性多形性心室頻拍(CPVT)の13歳女児例を経験したので報告する.【症例】13歳女児.【主訴】心室細動(VF)の精査【既往歴】虫垂炎以外特記事項なし.【家族歴】父,父方叔父,母方祖母が突然死しているが心疾患との因果関係は不明.【現病歴】2008年 1 月10日朝,急いで自転車で登校していたところ,心肺停止状態となった.救急隊によってAEDを使用して蘇生され,確認されたVFに対する除細動で心拍再開が得られた.紹介病院で後遺症なく回復し,QT延長症候群(LQTS)の疑いで,β-ブロッカー内服が開始された.遺伝子検査で,LQTSは否定的であったので,精査目的で当科紹介入院となった.【入院後経過】身体所見に異常は認めず,MDCTで低形成の右冠動脈が,high take offかつ左冠尖よりから急角度で起始し,右室流出路と大動脈間を走行していた.心筋血流シンチグラフィーは,安静時,運動負荷時のいずれも集積欠損は認めなかった.トレッドミル運動負荷検査では,心拍数の上昇に伴い,右室流出路由来のPVCが頻発し,一部 2 方向性であった.顔面浸水,運動負荷では,QTcの延長は認めなかった.以上の検査結果から,右冠動脈起始異常を伴ったCPVTと診断し,β-ブロッカーとCaブロッカー内服で経過観察中である.リアノジンレセプター遺伝子は陰性であった.【考察】特徴的な運動負荷時の心電図からCPVTと診断したが,VFの原因として,右冠動脈起始異常も関与している可能性がある.両者の合併は極めてまれであり,抗不整脈薬の選択,冠動脈形成術,ICD埋め込みなど,今後の治療や管理を考えるうえで興味深い症例と考えられた.

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