I-P-34
QT延長児へのエピネフリン負荷
国立循環器病センター小児循環器診療部1),心臓血管内科2)
豊田直樹1),宮崎 文1),坂口平馬1),黒嵜健一1),大内秀雄1),山田 修1),清水 渉2)

【背景および目的】QT延長症候群のエピネフリン(Ep)負荷が遺伝子型判定に有用であることが成人で報告されているが,小児での報告はない.小児のQT延長に対するEp負荷の反応とその有用性について検討すること.【対象】2005~2008年に負荷試験を施行したQT延長児のうちすでにβ遮断薬を内服していた 2 例を除く16例(年齢10 ± 2 歳,男女比 4:12).【方法】Ep負荷(0.1μg/kg急速静注後に0.1μg/kg/minで 5 分間持続静注)を行い,負荷前(B),投与直後のHR最大時(P),負荷開始後のHR定常時(S)における,HR,V5誘導でQTc(Bazett補正)を計測.Shimizuらの報告にならい,ΔQTc(S-B) ≧ 35msecをLQT1(A群),ΔQTc(S-B) < 35msecかつΔQTc(P-B) ≧ 80msecをLQT2(B群),それ以外をLQT3または正常例(C群)と評価した.A群またはB群で,承諾を得た11例で遺伝子検査を施行し,結果を比較した.【結果】A群10例 ,B群 3 例,C群 3 例であった.HR(B)(74 ± 12, 78 ± 8, 83 ± 5), QTc(B)(465 ± 27, 503 ± 66, 448 ± 31), HR(P)(105 ± 15, 105 ± 10, 111 ± 4), HR(S)(82 ± 14, 94 ± 12, 95 ± 15)に 3 群間に差はなかった.A群で遺伝子検査を施行した 6 例中 3 例(50%)で確定(LQT1: 2 例, LQT2:1 例)し,LQT1との一致率は2/6 (33%)であった.B群では 3 例全例に遺伝子検査を施行し,3 例(100%)で確定(LQT2:2 例, LQT5:1 例)した.LQT2の一致率は 2/6(33%)であった.遺伝子検査を施行した 9 例でのEp負荷でのQT延長症候群(LQT1またはLQT2)の一致率は6/9(67%)であった.【結語】小児におけるEp負荷は遺伝子型の判定率は高くなかったが,QT延長症候群の判定に有効であると考える.症例数が少なく,今後の症例数の蓄積が必要である.

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