I-P-36
副伝導路を介する房室回帰性頻拍に合併する心房細動例の検討
日本大学医学部小児科学系小児科学分野
市川理恵,住友直方,谷口和夫,中村隆広,福原淳示,松村昌治,阿部 修,金丸 浩,鮎澤 衛,岡田知雄,麦島秀雄

【背景】副伝導路(AP)に合併する心房細動(AF)は突然死の原因になるといわれている.小児房室回帰性頻拍(AVRT)に合併するAF症例について検討したので報告する.【対象および方法】対象は電気生理学的検査(EPS)時にAFが誘発された AVRT12例(9~33歳,平均年齢13.7 ± 3.4歳,男:女 = 10:2)である.これらを,発症年齢,APの顕性,潜在性の違い,AP部位の相違,心房粗動(AFL)の有無,治療とその後の予後について検討した.【結果】発症は 0~14歳,平均年齢6.4 ± 3.8歳で,11例には器質的疾患はなく,1 例にEbstein奇形を認めた.症状は動悸が 9 例,嘔吐が 1 例,眼前暗黒感が 1 例,気分不快が 1 例,失神が 1 例であった.2 例に偽性心室頻拍を認めた.EPSの回数は 6 例が 1 回,3 例が 2 回,2 例が 3 回,1 例が 4 回で,平均1.8回行っていた.AFが初回のEPSで誘発された症例は 9 例, 2 回目に初めて誘発された症例が 2 例,4 回目で誘発された症例が 1 例であった.APは平均1.4本存在し,顕性が10本,潜在性は 7 本で,顕性のAPは右室前壁,側壁,後側壁,後壁,後中隔,左室前壁,前側壁,後壁,後中隔,潜在性のAPは右前壁,前側壁,側壁,後壁,前中隔,左室後側壁および後壁に存在していた.AFLは12例中11例に認めた.AFは,2 例はAP に対する通電中のみ出現し, 7 例はAPのアブレーション後誘発されなくなった.他の 3 例においては,AFは非持続性であり臨床的にも認めていないため治療は行わなかった.【考察】臨床的にAFを認めた例は,その後にAFが再発し,致死的となり得る.しかし,APのアブレーション後はEPSでもAFは誘発されず,また臨床的にもAFの再発例はなかった.AF誘発例には,高率にAFLの合併を認めた.AF誘発にはAPの存在の関与が考えられ,APアブレーションがAFの誘発を予防することが考えられた.

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