I-P-38
周術期における異所性心房頻拍,接合部頻拍に対する塩酸ニフェカラントの有用性
長野県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
中野裕介1),田澤星一1),井上奈緒1),武井黄太1),梶村いちげ1),瀧聞浄宏1),安河内聰1),松下 弘2),梅津健太郎2),坂本貴彦2),原田順和2)

【背景】周術期における異所性心房頻拍,接合部頻拍は循環動態を不安定にして,致死的な経過をたどる危険性もあるが,治療に難渋することが多い.【目的】開心術後の異所性心房頻拍(EAT)および接合部頻拍(JET)に対する塩酸ニフェカラント(NIF)の効果と問題点について考察する.【対象】1999年以降に当院における先天性心疾患の開心術周術期の不整脈に対してNIFを使用した 7 例(男 5 例,女 2 例).疾患内訳はHLHS(1),SLV + IAA(1), DORV(2), VSD(1),TGA(2)で,施行手術はNorwoodなど開心姑息術(3), BDG(1), 心内修復術(3)であった.手術時月齢は2.7 ± 51カ月(0.4カ月~11歳)で体重は4.4 ± 9.2kg(2.35~28kg).【結果】不整脈の内訳はJET(5),EAT(2)で,発症時期は手術当日(5),1 日(1),12日後(1),発症時心拍数は190 ± 31(160~250)bpmであった.NIFは5/7例で初回静注(0.2~0.3mg/kg)後0.3~0.4mg/kg/hrで持続静注,2/7例で最初から持続静注した.持続静注期間は5.5 ± 5.0(1~17)日で,6 例で低体温管理がなされ,5 例でペーシングが併用された.全例で頻拍発作はNIF開始後 1~11時間で消失し,開始後心拍数は150 ± 17(140~170)bpmと徐拍化した.NIF開始時心機能は低下しており(LVFAC 15 ± 7.6%)血行動態が不安定であったが開始後FACは39 ± 5.0%と改善した.NIFによるproarrhythmiaはなく,5/7で洞調律に復し,1 例でPAC連発の持続,1 例で接合部調律が残存しアミオダロンなど他の抗不整脈剤に変更された.【結語】開心術周術期における異所性心房頻拍,接合部頻拍の治療薬として塩酸ニフェカラントは心機能を低下させることなく洞調律化できる有用な抗不整脈剤である.

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