I-P-39
二次性QT延長によるtorsade de pointesを起こした 3 小児例
日本大学医学部小児科学系小児科学分野
小森暁子,住友直方,中村隆広,市川理恵,福原淳示,松村昌治,宮下理夫,金丸 浩,鮎澤 衛,岡田知雄,麦島秀雄

二次性QT延長によると思われるtorsade de pointes(Tdp)の 3 例を経験したので報告する.【症例 1】2 歳女児.巨大心臓腫瘍(線維腫),心室頻拍(VT)の診断で,アテノロール,ピルジカイニドを投与していた.1 歳10カ月時にVTが再発し,ニフェカラント0.3mg/kg/hの持続投与でコントロールしたが,VTが再発したため,ニフェカラントを単回静注したところ,QTcが630msに延長し,TdpからVFに移行し,自然に停止した.アミオダロンに変更したが,再度QT延長を認めたため,べプリジル単独投与に変更し経過観察中である.【症例 2】14歳男児.12歳時にALL発症.化学療法中の真菌感染に対し,アンフォテリシンBの投与後に単形性心室期外収縮が出現し,QTcがモニター上610msに延長しTdpとなり,電気的除細動を施行した.VTに対し,メキシレチン,プロプラノロールの投与を行ったが,頻回のVT,心室細動(VF)が出現し,ニフェカラントを静注したが効果なく,アミオダロンの投与によりコントロールされた.しかし,カテーテル感染を契機とした多臓器不全となり死亡した.【症例 3】3 歳女児.在胎39週,1,970gで出生,日齢 2 より痙攣が出現し,早期乳児てんかん性脳症,脳性麻痺と診断.バルプロ酸,クロバザムで経過観察されていた.尿路感染による入院中に低K血症を契機に多形性VTが出現し,ニフェカラントで停止したが,心不全,呼吸不全を合併し,エピネフリンの投与後はTdpも出現し,血圧,不整脈のコントロールができずに死亡した.【考察】症例 1 はニフェカラント,症例 2 は抗真菌薬,症例 3 は低K血症による二次性QT延長と考えられた.QT延長はTdpのリスクがあるため,QT延長の可能性のある薬剤使用時には,QT時間のモニターが重要である.治療としては低K血症の補正とともに,QTcが550ms以上では薬剤の減量を,600ms以上では中止を検討するべきである.

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