I-P-41
小児におけるホルター心電図検査によるQT時間の検討
富山大学医学部小児科1),富山大学附属病院検査部2),富山大学医学部第二内科3)
廣野恵一1),林 史朗2),伊吹圭二郎1),斎藤和由1),渡辺一洋1),渡辺綾佳1),北島 勲2),井上 博3),市田蕗子1),宮脇利男1)

【目的】24時間ホルター心電図によるQT時間の測定は安静心電図より情報量が多く,診断に有用である.しかし,小児におけるQT時間は平均心拍数(HR)が速く,体動などのアーチファクトによる計測誤差が多く,基準範囲の設定は困難と考えられてきた.今回,健常小児のQT時間の解析を試み,その評価を行った.【対象】対象は当院小児科外来でホルター心電図検査を施行された54名(男子27名,女子27名,平均9.0歳)の健常人を基準参考範囲設定の母集団とした.またQT延長症候群と診断された16名でカットオフ値について検証した.【方法】ホルター心電図はNASAおよびCM5 誘導で24時間記録し,QTの自動計測にはCM5誘導を用いた.記録器はFM-100,150,180(フクダ電子)を用いSCM-6000(フクダ電子)で解析した.15秒間の加算平均心電図のQT時間を自動計測し,5 心拍ごとのQT時間の平均値 ± 2SD(標準偏差)を算出し性別,年齢別に比較を行った.【結果】正確度:HR 60~最大190までのQT時間を目視法と自動計測で比較した結果,HR 120まではほぼ一致しているが120以上では自動計測が高値傾向を示した.基準値の設定:各心拍(65,85,105,120)についてQT時間の性差について検討した結果,有意の差は認めなかった.年齢については,10歳未満と以上で有意差(p < 0.01)を認めた.特異性:QT延長症候群と診断された16名のうちホルター心電図によって陽性と確認された例数は14例であった.陰性と判定された 2 例は潜在性QT延長症候群 2 例であった.【結語】正確度では自動計測法はHR 160前後までが判定限界であり目視法においても同様であった.今回設定した基準参考範囲は,QT延長症候群との比較した結果においても,高い診断率(感度81.3%,得意度75%)を示し,良好な分類が可能となった.QT延長症候群において,日常生活での運動時,夜間から起床時など非侵襲的にQT変化をとらえることのできるホルター心電図検査は有意義であると思われる.

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