I-P-42
心房中隔欠損症と心室中隔欠損症におけるRRとQTの時間的変動性の比較検討
藤田保健衛生大学医学部1),藤田保健衛生大学保健学研究科2),刈谷豊田総合病院3),豊川市民病院4)
江竜喜彦1),畑 忠善2),海野光昭4),藤野正之3)

【背景】自律神経活動によって心周期は変動し心筋再分極時間も追従して変動する.心房中隔欠損症(ASD)や心室中隔欠損症(VSD)では左右短絡に依存して心拍低下することが示されているが,低下した心拍変動と催不整脈性基質の情報源である再分極時間の関係についての報告はない.そこでASDおよびVSD患児の左右短絡率とRR間隔とQT時間の変動の関係について検討する.【方法】対象はASD児20名(2.3 ± 1.6歳),VSD児20名(5.3 ± 2.1歳),対象(C群)110名(4.0 ± 1.7歳).心電図に一次微分と絶対値処理を行いRR間隔とQT時間を,ドプラ超音波法により短絡率(Qp/Qs)を求めた.RR間隔の標準偏差(SDNN)とQT時間の標準偏差(SDQT)を求めvariability ratio(VR)値を算出した.各群のVR値,SDNN,SDQTの比較,(Qp/Qs)とVR値,SDNNおよびSDQTとの相関性について検討した.【結果】(1)VR値では,ASD,VSD両群はC群に対して有意な高値(p < 0.001,p < 0.01)を示した.(2)SDNNではASD群,C群に対して有意な低値(p < 0.05,p < 0.05)を示した.(3)SDQTではVSD群はASD群,C群に対して有意な高値(p < 0.05,p < 0.05)を示した.(4)(Qp/Qs)とVR値の線形回帰では,ASD群のみ有意な相関(r = 0.69,p = 0.001)が観察された.【考察】健常児に比較してASD,VSD両群はRR間隔の変動に対するQT時間の変動の相関性は低下しVR値が増加する.原因として,ASDでは短絡量の増加に伴ってSDNNが減少すること,一方のVSDではSDQTが増加することに起因すると考えられた.左右短絡疾患であるASDとVSDは異なった心周期と心筋再分極時間を有することが示された. 

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