I-P-45
心房内血流転換術後遠隔期の心房頻拍に対するカテーテルアブレーション
獨協医科大学心血管・肺内科1),小児科2),自治医科大学循環器内科3)
籏 義仁1),坪井龍生2),宮本健志2),金子 昇1),三橋武司3)

心房内血流転換術では複数の心房切開,心房中隔切除,baffle形成などの外科的操作が行われ,術後遠隔期に上室性頻拍(SVT)が出現し得ると報告されている.Mustard術後 2 例およびSenning術後 1 例のSVTに対して,CARTOを用いて不整脈基質同定と根治術を試みた.【症例 1】28歳の女性.3 歳時に完全大血管転位(TGA)III型に対するMustard術が施された.抗不整脈薬多剤抵抗性のSVT(CRBBB,136/min)が確認された.肺静脈心房から体静脈心房へと両房室弁輪を時計方向に旋回し右房峡部を頻拍回路の一部とするマクロリエントリ性AT(TCL = 440ms)と判断した.baffleをはさみ両心房からTVA–IVC間に線状焼灼を行い頻拍は停止した.【症例 2】24歳の女性.2 歳時にTGA I型に対するMustard術が施された.SVTがあり,EPSを行った.肺静脈心房全体をマッピングすることは困難であったが,右房峡部でconcealed entrainmentが得られ,PPIはTCL(215ms)に一致した.baffleをはさみ両心房からTV–IVC間に線状焼灼を行い頻拍は停止した.【症例 3】19歳の男性.1 歳時にTGA II型に対するSenning術が施された.抗不整脈治療抵抗性AFL(TCL = 220ms)に対してbaffleをはさみ両心房からTV–IVC間に線状焼灼を行い頻拍は停止した.3 症例ともに他の頻拍は誘発されず,現在までSVTの再発もない.【まとめ】3 症例の頻拍は右房峡部を回路の一部としたSVTであり,baffleを穿刺することなくTVA–IVC間に対する両心房から線状焼灼を行い根治し得た.CARTOを用いることで,複雑な解剖を有する心房内血流転換術後SVTの診断と治療が可能であった.

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