I-P-46
徐脈性不整脈に対するβ1作動薬の効果について
新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野1),新潟市民病院小児科2)
長谷川聡1),鈴木 博1),羽二生尚訓1),沼野藤人1),佐藤誠一2),内山 聖1)

【はじめに】徐脈性不整脈に対する薬物治療としてはtheophyllineやcilostazolが知られているが,副作用のために症例によっては使用しにくい場合がある.私たちは徐脈性不整脈に対しβ1作動薬であるdenopamine,terbutalineを使用して徐脈をコントロールした症例について後方視的に検討し報告する.【症例】症例は 8 例(男児 4 名,女児 4 名),年齢は 0~13歳(中央値 7 歳).診断は基礎疾患のない洞機能不全症候群(SSS) 1 名,lt. isomerismに伴うSSS 1 名,心筋緻密化障害に合併したSSS 1 名,開心術後(VSD,TGA(II),TA)のSSS 3 名,TOF術後完全房室ブロック(CAVB)1 名,先天性CAVB 1 名.Denopamine単独(d群)が 4 名,両者併用(d + t群)が 4 名.Denopamineは0.5~2.1g/kg/day,terbutalineは 2~8mgで使用し経過を観察した.使用前後でHolter ECGを施行できたものは 3 例のみで,d + t群のlt. isomerismに伴うSSSの症例が最も効果があり,平均HRは35%増加し最大4.4秒認められたpauseも消失した.d群の基礎疾患のないSSSの場合は平均HRの増加は24%で,pauseは消失しなかったが5.7秒が4.4秒に短縮した.d群のTGA(II)術後SSSの症例は平均HRの増加は12%で,2 秒台のpauseは変化認められなかった.なお,d群の心筋緻密化障害に合併したSSSで,denopamineを中止後失神するepisodeが認められた.中止前後でHolter上平均HRは29%減少し,中止後にpauseが3.9秒確認された.またd + t群のTOF術後SSSではterbutaline中止後にHolter上の変化は認められなかったがCTRの増大が認められた.なお,全症例においてβ1作動薬開始後不整脈の増悪などは認められなかった.【考察】血行動態の破綻を来すほどではない徐脈性不整脈に対して,β1作動薬はある程度の効果が期待できると考えられた.

閉じる