I-P-47
乳児期早期発症の上室性頻拍の臨床的像
国立循環器病センター小児循環器診療部
山本雅樹,宮崎 文,坂口平馬,花山隆三,黒嵜健一,北野正尚,大内秀雄,山田 修

【背景および目的】新生児期および乳児期早期の上室性頻拍の発症機序の違いによる臨床像の報告は少なく,その臨床像,予後を検討する.【対象・方法】1980年 8 月~2008年12月,当院で経験した乳児期早期(6 カ月以下)発症の基礎心疾患を伴わない上室性頻拍36症例を対象とした.回帰性心房頻拍(AR群),非回帰性心房頻拍(AN群),発作性上室性頻拍(P群)に分類し,その臨床像,予後について診療録から後方視的に検討した.また洞調律復帰を治療有効とした.【結果】AR群 8 例,AN群15例,P群13例.フォローアップ期間はAR群39.1 ± 39.0カ月,AN群37.9 ± 29.0カ月,P群94.8 ± 55.2カ月.発作発症日齢(中央値)は,AR群 1~140日(0 日),AN群 0~110日(10日),P群 0~180日(22日)であった.発作時心拍数はAR群211 ± 21/分,AN群243 ± 42/分,P群266 ± 22/分(AR vs AN: p = 0.05, AR vs P: p = 0.002)とAR群で低かった.初期治療に要した抗不整脈薬数はAR群 0.8 ± 0.4,AN群2.7 ± 0.3,P群2.8 ± 0.9(AR vs AN: p = 0.005, AR vs P: p = 0.0005)で,初期治療有効例はAR群100%,AN群33%,P群100%だった.退院時(維持)投薬数はAR群1.1 ± 0.8,AN群1.8 ± 0.8,P群1.7 ± 0.5であった.心房頻拍では 2 歳時の累積発作自然消失率はAR群100%,AN群80%(p = 0.007)で,累積投薬中止率は 2 歳時でAR群100%,AN群60%(p = 0.005)で,観察期間中再発はなかった.P群では 9 例(69%)が乳児期のみ 1 の発作だったが,3 例(23%)は退院後も発作がみられ,1 例(8%)は一旦発作消失後 5 歳で再発した.【結語】乳児期早期発症の上室性頻拍において,非回帰性心房頻拍や発作性上室性頻拍は回帰性心房頻拍に比べ,発作時心拍数が高く,初期治療に難渋することがある.心房頻拍は成長とともに自然消失する.

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