I-P-49
Fontan手術後の蛋白漏出性胃腸症に対する内科的外科的管理
兵庫県立尼崎病院心臓センター小児循環器科1),心臓血管外科2)
坂崎尚徳1),佃 和弥1),坂東賢二1),藤原慶一2),大谷成裕2),大野暢久2),長門久雄2),清水和輝2),小田基之2)

【背景】Fontan手術後の蛋白漏出性胃腸症(以下PLE)は,生命予後不良の合併症であり,内科的外科的管理は重要な課題である.【方法】当院でFontan手術を受け,その後PLEを発症した 6 例(男性 2 例,発症年齢 3~28歳,術後PLE発症までの期間 0~17年)を対象とし,発症時の臨床データ,発症後の臨床経過を臨床記録から調べた.【結果】心疾患の内訳は,DORV 4 例,CAVVを伴うSRV 1 例,TA 1 例であった.Fontan術式は,APC 2 例,TCPC転換術後 1 例,TCPC 3 例であった.PLE発症後の経過年数の中央値は1.3年(0.7~9 年)で,この間に 2 例死亡し(右心不全,突然死),1 例が 9 年後に再発した.診断時症状は,浮腫,腹水,下痢であった.初回随時便α1-antitripsin濃度の中央値は75(26~493)mg/dl,血清蛋白値の平均値は4.4 ± 0.3mg/dlであった.6 例中 4 例は消化管シンチにより診断を確定した.外科的介入は 3 例で,大動脈弁下部狭窄解除術 + 人工導管交換術,非連続肺動脈に対する肺動脈形成術,共通房室弁置換術(CM 23mm)が行われ,すべてfenestrationが追加された.また,2 例にコイル塞栓術が追加された.薬物治療としては,4 例にステロイド治療とヘパリン点滴療法が併用されていた.また,ACE阻害剤(3 例),ボセンタン(1 例),ベラプロスト(2 例)が併用されていた.生存例 4 例は全例ステロイド内服中で寛解を維持している.【考察】蛋白漏出性胃腸症は,静脈圧上昇,リンパ管鬱滞,ヘパリン様物質の低下,サイトカインなどさまざまな機序が関連し発症すると考えられている.よって,発症後は,fenestration作成などの積極的な外科介入と,ACE阻害剤や肺動脈血管拡張剤,ステロイド治療およびヘパリン点滴を併用し,寛解を維持することが重要と考えられる.

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