I-P-51
フォンタン術後遠隔期合併症の規定因子と予測因子
東京女子医科大学循環器小児科1),心臓血管外科2)
稲井 慶1),島田衣里子1),高橋一浩1),藤田修平1),清水美妃子1),山村英司1),篠原徳子1),富松宏文1),森 善樹1),平松健司2),中西敏雄1)

フォンタン術後遠隔期には不整脈などさまざまな合併症が発生する.今後,術後遠隔期患者が増加してくる中で,合併症をできるだけ早期に予測し適切な対応を行うことが重要になってくる.フォンタン術後における各種合併症の規定因子や予測因子についてのわれわれの施設での検討結果をまとめて報告する.【不整脈】術後20年経過すると約50%の患者で何らかの不整脈が認められる.内臓心房錯位症候群と術後経過年数が不整脈発生の危険因子になる.心房肺動脈吻合患者では,右房容積が不整脈発生に関連し,BNP値が右房拡大を反映している.【心不全】術後20年以上経過した患者の約30%がNYHA III度以上の心不全の状態にあり,運動耐容能の著しい低下がみられる.安静時の心係数や心駆出率などは運動耐容能には相関しない.末梢の筋肉内の血行動態や血管機能が比較的よく相関する.うっ血性心不全患者同様,フォンタン術後患者でもpVO2の低い患者は心血管イベントの発生率が高い.【蛋白漏出性胃腸症】カテーテルなどで得られる血行動態の指標で発症を予測することは困難である.蛋白漏出性胃腸症合併例では,リンパ球数が非合併例に比べて有意に少なく,CD4 +/CD8 +比が低下している.またTh1細胞の上昇もみられる.このようなリンパ球の異常がみられる患者は,蛋白漏出性胃腸症の発症を念頭に慎重にフォローする必要がある.【血栓症】右房内や肺動脈内の血栓は術後 5 年頃から出現し,20年経過すると10%の患者でみられるようになる.種々の凝固系異常や血小板の活性化が報告されてきたが,明確な予測因子は今のところ不明である.定期的なCTや経食道エコーでの確認が必要となる.【まとめ】個々の患者で,Fontan術後患者の予後予測因子,failing Fontanの規定因子,またTCPC conversionのタイミング決定のパラメータを総合的に検討していくことが重要である.

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