I-P-52
TCPC術前後の心電図変化による心房機能の検討—外科的isthmus ablation併用の心房機能への影響と不整脈予防について—
慶應義塾大学医学部小児科1),心臓血管外科2)
潟山亮平1),古道一樹1),土橋隆俊1),前田 潤1),福島裕之1),饗庭 了2),山岸敬幸1)

【緒言】Fontan術後の不整脈は,APC術と比しTCPC術での減少が期待されるが完全コントロールは困難である.近年,Fontan術後の上室性不整脈と心房機能・心房電位低下(前胸部誘導の最大P波電位(VaP)≦ 0.15mV)の関連が報告されている.当院では2003年以降,遠隔期不整脈の予防目的で術中外科的isthmus ablationをradiofrequency deviceまたはcut & sewで下大静脈―右側房室弁輪間と下大静脈―冠静脈洞(存在する場合のみ)へ積極的に併用している.今回,術式別に術後心房機能・遠隔期不整脈について検討した.【方法】TCPC術前後の心電図変化を術式別(lateral tunnel:LT法,extracardiac conduit:EC法)に後方視的に比較した.LT法 9 例,EC法 7 例,EC法 + 術中isthmus ablation併用 9 例,手術時年齢は平均 5y6m(1y5m~27y7m).手術前後に記録した12誘導心電図で肢誘導の最大P波電位(VLP)・前胸部誘導の最大P波電位(VaP)・PQ間隔(PQ)を計測し,3 群間で比較検討した.P波電位はVLPとVaPの大きいほうについて25%以上の減弱を有意とした.PQ間隔は20msec以上の増加を有意とした.【成績】P波減弱とPQ増加はそれぞれLT群 9 例で 8 例(89%)・9 例(100%),EC群 7 例で 5 例(71%)・2 例(29%),EC + ablation群 9 例で 6 例(67%)・1 例(11%)であった.P波電位は,術後有意に減弱するが,術式間での有意差は認められなかった.PQ時間は,LT群全例で延長し,他の術式との間に有意差を認めた.EC群とEC + ablation群の 2 群間比較では,P波電位・PQ間隔とも有意差は認めなかった.【結論】TCPC術後に心房電位が減弱し心房機能が影響されている症例が多いことが確認されたが,LT法とEC法で術式による差はなかった.TCPC術時の外科的isthmus ablation併用による心電図変化は,ablationを併用しない症例と同等であり,術中ablationは術後早期の心房機能に悪影響を与えず,術後不整脈を予防する可能性が示唆された.さらに,遠隔期の不整脈予防効果について経年的に観察したい.

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