I-P-55
当院におけるFontan手術適応症例に合併する肺動静脈瘻への治療介入
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学1),心臓血管外科学2),麻酔・蘇生学3)
栄徳隆裕1),大月審一1),岡本吉生1),大野直幹1),近藤麻衣子1),栗田佳彦1),森島恒雄1),佐野俊二2),笠原真悟2),岩崎達雄3),戸田雄一郎3)

【背景】Fontan型手術(F術)適応患者の肺動静脈瘻(PAVF)はチアノーゼの原因となる.発生原因に関しては,一般的にhepatic factorの欠乏が関与していると考えられており,PAVFが存在する症例では早期にF術を施行することが重要である.しかしF術後でもPAVFが残存する例もあり,さらなる治療介入を必要とする.【方法】当院で過去 5 年間に,F術前の段階でPAVFを認めた 7 例に対する治療介入について検討した.【対象】疾患内訳はDORV/MA 1 例,Ebstein’s奇形 1 例,SA/CAVV 1 例,HLHS 2 例,多脾症 2 例(いずれもTCPS施行)で,診断時年齢は 1 歳10カ月~10歳 3 カ月(中央値 3 歳 5 カ月)であった.【結果】7 例のPAVFの分布は右片側:左片側:両側PAVF = 6:1:0,F術前SpO2 = 67~84(平均値76.4)%であった.F術待機中の 1 例を除く 6 例に対し,F術(extracardiac TCPC)が施行された.F術により 1 例はPAVFが改善したが(16.7%),残る 5 例(83.3%)にはPAVFが残存した.残存 5 例のうち,軽症の 1 例は経過観察となり,残る 4 例には治療介入を行った.治療介入の内訳として, 1 例にHOT + bosentanを導入し,1 例は外科的に左右の肺動脈をseptationし,患側(右)には下大静脈血流を誘導し,健側(左)にはBT-shuntを新たに増設した.PAVFと反対側に肺動脈狭窄を合併した 2 例には,経カテーテル的にstent留置(1 例)や,BAP(1 例)を行い,左右肺血流分布の不均衡改善を図った.これら治療介入を行った全 4 例においてSpO2は有意に上昇し(74 ± 5.9%から91 ± 4.3%),うち 2 例はカテーテル検査にてPAVFの改善も確認した.【結語】F術を施行しても改善を認めないPAVF症例には,さらなる治療介入を行うことによって,SpO2の上昇のみならず,PAVFの減少も期待できる.

閉じる