I-P-56
フォンタン術後症例における肝線維化マーカーの有用性
富山大学医学部小児科1),第一外科2),第三内科3)
渡辺綾佳1),斎藤和由1),伊吹圭二郎1),渡辺一洋1),廣野恵一1),市田蕗子1),宮脇利男1),芳村直樹2),安村 敏3)

【背景】近年,フォンタン手術の長期予後が明らかとなってきており,合併症の一つとして長期肝うっ血に伴う肝の線維化の進行が注目されている.【目的】フォンタン術後の肝線維化の指標を検討する.【方法】対象は,フォンタン術後症例20例.肝線維化の指標として,5 項目の肝線維化マーカー,ヒアルロン酸,レチノイド結合タンパク(RBP),3 型プロコラーゲンN末端ペプチド(P3NP),4 型コラーゲンEIA,4 型コラーゲン7SRIA(P4NP)を測定した.生化学検査では総ビリルビン,ANP,NT-proBNPを測定した.上記検査項目と,術後心臓カテーテル検査データやフォンタン術後期間との関連性について検討した.【結果】対象の年齢は 1~17歳(中央値6.5歳)で,フォンタン後月数は 3~177カ月(中央値38.5カ月)であった.フォンタン術後期間と,肝線維化マーカー,総ビリルビン,ANP, NT-proBNPとの相関は認められなかった.肝線維化マーカーのP47Sと平均肺動脈圧は正の相関を示した(p = 0.014, r = 0.66).ヒアルロン酸,4 型コラーゲンEIAは有意ではなかったが,正の相関傾向を示した.すべての肝線維化マーカーが異常値を示した 1 例では,腹部CT上も肝硬変の初期像に一致する所見であった.【結論】これまでの報告と異なり,今回の検討では,フォンタン術後の年数と肝線維化マーカーとの関連性は認められなかった.術後肺動脈圧が高い症例では,ヒアルロン酸,4 型コラーゲンEIA,P47Sは早期から上昇しており,今後,肝うっ血に伴う肝線維化,肝硬変への進行について,注意深い観察が必要であると考えられた.左低形成症候群など困難例のフォンタン到達度が高くなっている現在,肝うっ血に伴う肝線維化,肝硬変は増加していくことが予想され,新たな合併症として重要であると思われた.

閉じる