I-P-57
Fontan術後の蛋白漏出性胃腸症に対する高用量スピロノラクトン療法
埼玉県立小児医療センター循環器科
菅本健司,伊藤怜司,河内貞貴,菱谷 隆,星野健司,小川 潔

【背景】Fontan術後合併症の中で蛋白漏出性胃腸症(以下PLE)は治療に難渋することが多い.血行動態上の問題点があればカテーテルインターベンションや外科的治療,さらに血管拡張剤や利尿剤などの抗心不全療法が併用されることが多い.また特異的治療としてステロイドやヘパリンなどの薬物療法も試みられる.薬物療法の中ではステロイド療法は比較的有効例が多く選択されることが多いが,ステロイド依存性となりステロイドの副作用が問題となることも少なくない.今回,われわれは 2 症例のFontan術後PLEに対して高用量スピロノラクトン療法(high-dose spironolactone therapy/以下HDST)を行った.【症例 1】HLHS,TCPC後 1 年10カ月でPLE発症.Lt-PSに対するBADとプレドニン内服で寛解したが減量とともに再燃,ステロイド依存性となりHDSTとしてアルダクトン3.6mg/kg/dayを開始.【症例 2】HLHS,TCPC後 1 年でPLE発症.プレドニン内服で寛解したが以後ステロイド依存性となる.その後ステロイド抵抗性となりHDSTとしてアルダクトン3.8mg/kg/dayを開始.【結果】2 症例ともに急性効果(浮腫の改善,TP,Alb値の上昇)を認め,ステロイドの減量または中止が可能となった.また症例 1 は長期にわたりHDSTを継続(観察期間:1 年11カ月)しているが軽度の低ナトリウム血症以外の副作用等は認めていない.症例 1 では血中アルドステロンを定期的に測定した.HDST開始後血中アルドステロンは上昇し高値を示すが,経過中に血中アルドステロン値が低下してくるとTP,Albが低下する傾向を認めた.【結論】少数例での経験ではあるがFontan手術後のPLEに対する高用量スピロノラクトン療法は有用であった.適切な用量設定に血中アルドステロン値が有用な可能性がある.

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