I-P-59
総肺静脈還流異常修復術後の不整脈のリスク因子と遠隔追跡
社会保険中京病院心臓血管外科1),小児循環器科2)
杉浦純也1),櫻井 一1),水谷真一1),加藤紀之1),野中利通1),波多野友紀1),野田 怜1),松島正氣2),大橋直樹2),西川 浩2),久保田勤也2)

【対象と方法】1994年 5 月~2008年 6 月に総肺静脈還流異常症根治術を施行した54症例.単心室症例は除外.手術時年齢3.7 ± 10.4カ月(0 日~4 歳).追跡期間66 ± 52.4カ月(1~170カ月).TAPVC型ごとの術後早期の不整脈の発生頻度および不整脈発症のリスク因子を検討.また術後 6 ± 2.2年(1~9 年)に施行したHolter心電図(20症例)にて術後遠隔期の不整脈発生状況を調査.【結果】Darling分類の内訳は 1 型28例,2 型11例,3 型11例,4 型 4 例.早期結果は,病院死亡 7 例(13.0%),術後肺動脈閉塞(以後PVO)発生 4 例(7.4%).不整脈の内訳は,(SVT,AFL,SVPC,VPC,junctional rhythm)で,1 型(4,0,3,0,1)例,2 型(2,2,2,0,2)例,3 型(3,1,3,2,0)例,4 型(0,0,0,0,0 例)(重複あり)が認められた.合計 1 型で 6 例(24.3%),2 型で 8 例(72.3%),3 型で 5 例(45.4%),4 型で 0 例(0%)に発生がみられた.不整脈の発生リスク因子として,「体重,術後肺高血圧,術後PVO発生,TAPVC型(1~4),術前不整脈の有無」について検討し,「TAPVC 2 型」がodds比9.44,p値0.011で有意なリスク因子となった.抗不整脈薬は20例の不整脈症例中10例(50%)で使用,72カ月後は17.3%で使用.遠隔期Holter心電図は,A:0 ~10回/日,B:11~100回/日,C:101~1,000回/日,D:1,001回以上/日として,SVPC(A 13,B 4,C 2,D 1 例),VPC(A 16,B 1,C 2,D 1 例),SVPC short run 1 例,sustained SVT 1 例を認めた.また 1 例で術後 4 年目に感冒契機にSVT起こし,DC施行した.計測できた 9 例でVO2 maxは43.0 ± 5.3ml/kg/min.【考察】SVTやAFL等の上室性拍性不整脈が多く,心室性不整脈は少数例のみであった.遠隔期では少数例であるがSVTを認め,QOLに大きな影響を与えている.2 型で不整脈が多かった原因としては,心房内修復に伴う,右房切開や心房中隔組織切開も一因である可能性が考えられるが,さらなる検討が必要と思われる.

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