I-P-61
ダウン症児の術後遠隔期
東京大学医学部小児科1),心臓外科2)
小野 博1),豊田彰史1),中村嘉宏1),峯岸祥人2),北堀和男2),高岡哲弘2),村上 新2)

【はじめに】ダウン症はさまざまな合併奇形を有し,心奇形は約40%に発症する.その身体的特徴により,術後肺高血圧が残存したり,呼吸循環以外の問題,例えば 1%に血液疾患,その他白内障,中耳炎を合併したりするため,多診療科にわたるフォローアップが必要である.【目的】ダウン症の術後に入院管理を要した症例をreviewし,その内容を明らかにする.【対象】2004年 4 月~2008年12月に東京大学医学部附属病院小児科に再手術以外で入院となった症例は 6 例であった.【症例 1】完全型房室中隔欠損,両大血管右室起始,術後 3 年 9 カ月.肺炎を契機に右心不全となり入院.【症例 2】完全型房室中隔欠損,術後 8 カ月.肺炎を契機に左側房室弁逆流の増加,左心不全となり入院.【症例 3】中間型房室中隔欠損,術後 2 カ月より頻回に肺炎,右心不全で入院.【症例 4】心房中隔欠損,術後 3 カ月より頻回に肺炎,右心不全で入院.【症例 5】中間型房室中隔欠損,術後に急性骨髄性白血病を発症.【症例 6】両大血管右室起始.低蛋白血症を認め入院.甲状腺機能低下が原因であった.【結果】ダウン症児は心内修復後の肺病変の回復が正常児と比べ遅いことが知られている.症例 1 は術後 3 年であるが,肺高血圧が残存し,症例 2 は人工弁置換術を施行した.症例 3 は睡眠時無呼吸があり,肺高血圧の増悪因子となっている.在宅NIPPV療法を考慮している.症例 4 は術前に肺生検を施行し心内修復を行ったが,肺炎時には体血圧を超える肺動脈圧となっており,ボセンタン,シルデナフィルの内服を行っている.症例 6 は成人例であり,診断に難渋した.【考案】ダウン症児は,心内修復後も肺病変が残存もしくは回復の遅れがあり,巨舌などが原因での上気道狭窄があり肺高血圧の増悪因子となる.易感染性もあり,気道感染を繰り返すことにより,肺高血圧症の増悪因子となる.甲状腺疾患,血液疾患など問題点が多岐にわたるため,全内科的フォローが必要である.

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