I-P-62
乳児期Blalock-Taussigシャントの術後遠隔期から見た肺血流減少型単心室に対する治療戦略についての検討
大垣市民病院小児循環器新生児科1),胸部外科2)
倉石建治1),太田宇哉1),小坂井基史2),近藤大貴1),服部哲夫1),石本直良2),西原栄起1),大城 誠1),横山幸房2),玉木修治2),田内宣生1)

【背景】Blalock-Taussigシャント(以下BT)は肺血流減少型単心室の初回手術として行われるが,依然院内死亡やステージ間死亡がある.【目的】BTの径と遠隔期成績から肺血流減少型単心室の治療戦略を探ること.【対象】1993~2008年の間に初回手術として当院で乳児期にBT変法を受けた単心室患者のうち,術後 1 カ月以内に再手術を受けなかった18例.男:女 = 10:8.基礎疾患(人)は三尖弁閉鎖 4,僧帽弁閉鎖 1,純型肺動脈閉鎖 3,共通房室弁口 8,左室性単心室 2.3 例が院内死亡,2 例がステージ間死亡,5 例が遠隔期死亡で,Fontan到達例は 8 例であった.以下中央値(最小~最大 ± 標準誤差)で示す.手術時日齢は63.5(1~101 ± 6.7),体重は3.9(2.3~7.2 ± 0.3)kg.BTの径は3.5(3~4 ± 0.07)mm.院内死亡を除く術後観察期間は9.8(1.6~16.0 ± 1.1)年である.【方法】BT graftの径 ?? 体表面積(径/BSA)と院内死亡,ステージ間死亡,退院時酸素飽和度(SO2),BT持続期間(BTから次の手術または死亡までの期間),Fontan到達の有無の関係を後方視的に検討した.【結果】院内死亡群と生存退院群で径/BSAに差はなく{15.8(14.7~17.0 ± 0.7),15.6(11.5~24.4 ± 0.8)mm/m2},ステージ間死亡群は生存群に比べ径/BSAが大の傾向にあった{20.5(16.5~24.4 ± 4.0),15.4(11.5~19.1 ± 0.6)mm/m2,p = 0.13}.また,径/BSAとSO2,BT持続期間は負の相関傾向にあり(p = 0.06,0.07),Fontan到達例は非到達例に比べ径/BSAが小さく{14.6(11.5~17.8 ± 0.7),16.8(14.7~24.4 ± 4.0)mm/m2,p = 0.028},BT持続期間が長かった{917(413~1,790 ± 178),243(60~521 ± 63)日,p = 0.002}.【結論】体格に比しBTが太い例は予後が悪く,細いほうが酸素飽和度は高く,持続期間が長く,Fontan到達例が多かった.細いBTで十分酸素化が得られねば予後不良と考えられ,肺血流減少型単心室には肺血管や気道に対する治療が重要ではないかと思われた.

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