I-P-63
先天性心疾患に対する二心室心内修復術困難と判断し肺動脈絞扼術を施行されたDown症候群の経過
大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科1),心臓血管外科2)
石井 良1),濱道裕二1),萱谷 太1),稲村 昇1),門田 茜1),塩野展子1),前川 周1),河津由紀子1),盤井成光2),川田博昭2),岸本英文2)

【はじめに】先天性心疾患を伴ったDown症候群の中で,肺動脈絞扼術(PAB)の施行を必要とする例がある.その中でも二心室心内修復術(BVR)ができない場合は予後不良例が存在する.【目的】肺血流増加型の先天性心疾患を合併したDown症候群のうち,PABを施行し,BVRが選択できなかった症例について報告する.【対象と方法】対象は1993~2008年の間にPABを施行された25例のうちBVRが選択できなかった 8 例.疾患はCAVC 5,CAVC DORV 3 例.後方視的に経過を検討した.【結果】PAB施行時の年齢は日齢 6~7 カ月(中央値 3 カ月).CAVCの 5 例はunbalanced CAVCであるため,CAVC DORVの 1 例は左右心室が小さく,2 例はVSDの位置のために,BVRが不可能と判断し,PABを施行.両方向性Glenn(BDG)手術を目指す方針とした.PAB後の最初の心臓カテーテル検査時(年齢 1~4 カ月中央値 2 カ月,体重2.7~5kg中央値3.2kg)の平均肺動脈圧または肺動脈楔入圧は15~28mmHg(中央値20mmHg)であった.平均肺動脈圧が15,16mmHgであった 2 例はBDGを施行.残りの 6 例は平均肺動脈圧が17~28mmHgでありBDGは困難と判断した.PAB後最初の心臓カテーテル検査(年齢 1 カ月~3 歳,中央値 1 歳 3 カ月 体重2.7~11kg,中央値 7kg)では 6 例とも平均肺動脈圧は,高値のままで推移し,やはりBDGは困難と考え待機した.3 例は上気道閉塞のための低換気による肺血圧の上昇を懸念して扁桃摘出術を施行したが,肺動脈圧は改善しなかった.1 例は多血症のためBT shuntを施行した.2 例は待機中に死亡した.【まとめ】先天性心疾患を合併したDown症候群で,二心室型心内修復術困難と判断され肺動脈絞扼術を施行した例では,待機中に肺動脈圧が下がらず,両方向性Glenn術が困難な症例が多かった.おのおのの症例にカテーテル検査,手術施行時の体重や年齢に,ばらつきがみられた.今後,肺動脈圧を低下させることも含めて治療戦略を考える必要がある.

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